コロナ第7波で救急搬送は〝SOS〟 相次ぐ要請で「困難事案」急増

全国で新規感染者が過去最多を更新し、東京都でも1日の報告が4万人を超えるなど、過去最大規模となっている新型コロナウイルスの感染「第7波」。感染者の増加によって、医療提供体制は逼迫(ひっぱく)の様相を呈しており、命に直結する救急搬送の現場にも危機感が漂っている。
救急隊「全隊がいない」
「新型コロナウイルス傷病者1名。起き上がれない」
東京都千代田区の東京消防庁災害救急情報センター。119番通報を受けて消防隊や救急隊を出動させる消防活動の司令塔だ。通報を受けた指令担当者の緊張を帯びた声が響く。
「周りの救急隊が全隊いないので、お時間をみてください」
「救急要請が多く、時間がかかるかもしれません。間違いなく向かいますから」
担当者は口々に、通報者へ厳しい現状を告げた。
東京消防庁管内では救急要請が急増している。
7月1日には救急出動が3274件に上り、統計が残る昭和35年以降で史上2番目の多さとなった。コロナの感染拡大に加え、症状の似通った熱中症などでの要請が相次いでいるとみられ、「梅雨明け以降、暑さとコロナの感染拡大で増加してきた」(災害救急情報センター担当者)という。
35年以降で出動件数が多かった過去10番目までの記録のうち、今年の梅雨明け以降が7件を占める。1日の出動件数は平均2千件程度だが、現状では3千件を超えており、東京消防庁は人員を増やして対応している。
マンパワーの限界
受け皿となる医療機関も限界を迎えつつある。
救急搬送時に医療機関への受け入れの照会が4回以上で、現場から出発するまでに30分以上を要した「救急搬送困難事案」。東京消防庁管内では7月18~24日の1週間に3173件(前週比42%増)だった。受け入れ先を見つけるため、現場の救急隊だけではなく、災害救急情報センターの職員も各医療機関へ電話するなどして支援している。センターの担当者は「電話をかけてもかけても病院が見つからない」と話す。
民間救急の現場でも厳しい状況は変わらない。保健所の要請でコロナ感染者を医療機関へ搬送する「民間救急フィール」(斉藤学代表)では、疾患などを持つ人の搬送を手掛けてきたが、6月以降、東京の人員の全てをコロナ患者の搬送に回してきた。1日15~20件を搬送するが、マンパワーの限界から搬送依頼を断らざるを得ない日もあるという。
搬送困難事案はコロナ感染者数と連動
フィールは都心と多摩地区にそれぞれ拠点があるが、6月以降は各地域の医療機関が患者を受け入れられず、他の地域へ搬送するケースも出てきた。1日3~4件は遠方にまで搬送しなければならない状態といい、斉藤氏は「患者さんの中には酸素吸入器を着けるような重症化の危険のある方もいる。できれば近くで受け入れてくれればいいのだが…」と語る。
総務省消防庁が全国52の消防で取りまとめた7月18~24日の救急搬送困難事案は6035件(同46%増)に達した。このうち、コロナ感染が疑われる事案は2676件(同67%増)に上っている。
総務省消防庁の担当者は「全体の件数の推移はコロナ感染者数と連動している。感染拡大が搬送困難な事案の増加要因だと考えられる」と分析する。東京消防庁の担当者は「収束は見通せないが、都民を助けるのが消防。着実に対応していきたい」と語った。(内田優作)