北九州市八幡西区で2012年9月、不動産会社経営の男性(当時72歳)が刺されて重傷を負った事件で、福岡県警は29日、特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)系組長、内蔵成(くらなり)喜八容疑者(55)ら5人を殺人未遂容疑で逮捕した。
工藤会は意に沿わない一般人への襲撃を繰り返し、12年12月に全国唯一の特定危険指定暴力団に指定。県警は14年9月から組織壊滅を目指す「頂上作戦」に着手した。1998~2014年に県内で元漁協組合長ら市民が襲撃された4事件を巡り、殺人容疑などでトップで総裁の野村悟被告(75)とナンバー2で会長の田上不美夫被告(66)らが逮捕、起訴された。
今回の事件も、この4事件の期間に重なることから、県警はトップの関与についても調べる方針だ。
他に逮捕されたのは鹿児島県湧水町、工藤会系組幹部、竹内信二(57)=別の事件で服役中▽福岡県中間市、配送員、今田雄二(63)――ら4容疑者。
逮捕容疑は、5人は共謀し12年9月13日午後7時5分ごろ、北九州市八幡西区の国道交差点で、信号待ちをし乗用車の助手席にいた男性の胸を刃物のようなもので複数回刺し、殺害しようとしたとしている。県警は5人の認否を明らかにしていない。
県警によると、男性を襲撃したのはオートバイに乗っていた2人組で、車の左側に停車後、助手席側の窓ガラスをたたき割り、持っていた刃物で男性を刺したという。犯行後、2人組はオートバイで逃走していた。男性は当時「刺される心当たりはない」と話しており、その後、病死した。
県警は目撃情報などから、工藤会が関係しているとみて捜査。事件当時5人はいずれも工藤会に所属し、今田容疑者が組長の役割を担っていたという。県警は5人の役割分担や指示系統などの全容解明を進める。
事件現場を管轄する県警八幡西署の実田公彦署長は29日夜に記者会見し「被害者の方が病気で他界され、直接犯人検挙を伝えられず残念だ。善良な市民が襲われた無念の思いを晴らすためにも、事件の全容解明を進める」と話した。
福岡地裁は21年8月、野村被告に死刑、田上被告に無期懲役の判決を言い渡し、いずれも控訴している。