旧統一教会、冷戦下に影響力拡大…反共産主義掲げ

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治は、どのようにして関わりを持つようになったのか。
旧統一教会と自民党とのつながりは古い。教会の歩みをまとめた「日本統一運動史」や創設者の文鮮明氏の自伝によると、安倍晋三・元首相の祖父・岸信介元首相と文氏は、約半世紀前から反共産主義の立場を通じて交流を持っていた。
韓国で創設された旧統一教会は1959年から日本で布教を始め、64年に宗教法人として認証された。教義として伝統的な家族観を尊重し、共産主義を強く否定していた。
68年には文氏が主導し、政治団体「国際勝共連合」を日本と韓国に創設。日本の初代名誉会長は、戦前に右翼政治家として活動した元日本船舶振興会会長の笹川良一氏だ。笹川氏は保守派の岸氏と関係が深く、岸氏に教会を紹介したという。
こうした縁で岸氏は、70年に東京の教会本部で講演。73年には文氏と面会した。80年代には韓国で開かれた見知らぬ信者同士の「合同結婚式」で、岸氏の祝賀メッセージが代読されたこともあったという。
立命館大の上久保誠人教授(現代日本政治学)は「東西冷戦下で、西側諸国では『共産主義の打倒』が叫ばれていた時代。共産主義の脅威から自由民主主義を守るため、保守系の政治家は教会を共闘できる相手とみていた」と説明する。
一方、旧統一教会は選挙で政治家に運動員を派遣したり、票の取りまとめをしたりしてきた。元信者の仲正昌樹・金沢大教授(政治思想史)は「教会は政治との関係作りを狙い、政治家は熱心に選挙を手伝う信者や組織票を当てにした。持ちつ持たれつの関係がずっと続いてきた」と話す。