日本政府は、国民の生命と財産を守る抑止力を高めるため、1000発規模の長射程巡航ミサイルの保有を検討している。中国とロシアは日本周辺で軍事的威圧行為を繰り返し、中国軍は今月初め、日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルを撃ち込んできた。巡航ミサイルは「国産」中心で想定しているが、1000発規模で脅威に対処できるのか。
「長射程ミサイルの研究開発は『敵基地攻撃能力』から名称変更した『反撃能力』の具体策に位置づけられる。『日本有事』の懸念が高まるなか、安全保障を強化する重要施策だ」
政府関係者は語った。
相手の対空ミサイルなどの圏外から打撃を与える長射程ミサイルは「スタンド・オフ・ミサイル」と呼ばれる。日本では、離島侵攻に対処する島嶼(とうしょ)防衛用として導入を検討している。
新たなスタンド・オフ・ミサイルは、陸上自衛隊に配備済みの「12式地対艦誘導弾」の能力向上型も含めた国産ミサイルを中心とする方針という。年末の来年度当初予算案編成に向けて、詳細の検討を進める。
具体的には、12式を戦闘機から発射する「空発型」、艦上から発射する「艦発型」などに改良。数百キロの射程を1000キロ以上に延ばし、変則軌道で敵の迎撃を避ける「高速滑空弾」、音速の5倍以上の速度で進む「極超音速誘導弾」などを想定して、研究・開発を加速したい考えだ。
防衛省は当初、欧米のミサイル導入を検討したが、輸入品の場合は改修が必要だ。国産品なら日本規格に合わせて量産が可能で、価格抑制や安定供給も期待できる。
年末には、外交・安全保障政策の核となる「国家安保戦略」など戦略3文書の改定が控え、長射程ミサイルの具体論も議論されるとみられる。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「長距離ミサイルの保有は、抑止力の観点から当然だ。中国などは日本を狙ったミサイルを多数保有しているが、日本は憲法9条などの制約から持てない状況は矛盾していた。新兵器の開発はゼロベースだけに、相当な力を注がなければ難しい。有事での消耗などを想定すると、1000発で十分なのか。数字ありきではなく、徹底的にシミュレーションしてミサイルの種類、必要数を導き出すべきだ」と強調した。