小学生男児の陰茎を咥え、時には自らの陰茎を男児の口腔内に入れて、自らの性欲を満たしていたのは、あろうことか子どもたちを預かる男性シッターだった――。男はその行為をひそかに動画で撮影し、時には寝ている男児の顔に射精もしていた。
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被害者20人、強制性交等22件、強制わいせつ14件、児童ポルノ製造20件
東京地裁は8月30日、約4年4カ月にわたって繰り返された、5~11歳の男児計20人に対する強制性交や強制わいせつなどの罪に問われた橋本晃典被告(31)に懲役20年の実刑判決を言い渡した。
小児性愛者による、前代未聞の規模の被害者が出たわいせつ事件である。司法担当記者が解説する。
「橋本被告は元々保育士の資格を持っていました。利用希望者とシッターをマッチングするアプリを介して利用者の自宅を訪問して、わいせつ行為をしていたことが発覚し、逮捕時も大きな話題になりました。携帯などで行為を隠し撮りしていたことから、余罪も大量に発覚しています。
かつて働いていた児童養護施設や、NPO法人が開催するキャンプにボランティアスタッフとして参加した際にも、トイレやテント内でわいせつな行為を繰り返していたことも判明しています。結果、被害者は20人に膨らみ、強制性交等22件、強制わいせつ14件、児童ポルノ製造20件の計56の罪に問われていました」
判決文にはその56件の事件が羅列されている。その一部を再構成して列挙する。
判決文に羅列された卑劣過ぎる犯行の手口
〈●被害者A君のケース(8~10歳にかけて2年間被害に遭い続ける)
・2015年8月13~16日、広島市内のキャンプ場で橋本被告に陰茎を手で弄ばれた
・2015年10月4日、広島県呉市内の公園のトイレで陰茎を橋本被告に咥えられ、橋本被告の陰茎を咥えさせられた
・2016年8月18~21日、広島市内のキャンプ場の宿泊施設とトイレで陰茎を橋本被告に咥えられ、橋本被告の陰茎を咥えさせられた
・2017年8月3~6日、広島市内の宿泊研修施設のトイレで陰茎を橋本被告に咥えられ、橋本被告の陰茎を咥えさせられた〉
〈●被害者B君のケース(当時7歳)
・2017年8月11日、静岡県内から東京都内までの間を走行中の自動車内で寝ていたところ、着衣の中に手を入れられ陰茎を弄ばれた
・2017年8月18日未明、9月3日未明、9月6日未明、10月5日午後、東京都内の児童施設内や多目的トイレで陰茎を橋本被告に咥えられ、その姿態を動画で撮影された
・2017年10月18日未明、児童施設内で橋本被告に陰茎を手で弄ばれ、その姿態を動画で撮影された〉
〈●被害者C君のケース(当時7歳)
・2019年11月8日から翌未明にかけて、預けられていた知人の家で寝ていたところ、橋本被告にズボンを下げさせられて陰茎を露出させられ、顔面に射精された〉
こうした保育の現場で起きるとは信じがたい卑劣な犯行が、保護者のあずかり知らないところで繰り広げられていたのである。
「公判では被害男児の陳述書も読み上げられ、『事件の恐怖がよみがえってしまう』という現在の心境も明かされました。別の男児の親は『当時息子は橋本被告にされたことの意味は分からなかったと思うが〈キャンプには行きたくない〉と言っている。犯行が卑劣過ぎて言葉にならない』と、被害者側の処罰感情はかなり強いものでした」(前出・司法担当記者)
2人の児童に対する犯行の一部は無罪を主張
橋本被告は公判で、大部分の罪を認めた。しかし2人の男児に対する犯行の一部については無罪を主張していた。
「2019年の9月11日にD君(当時8~9歳)の自宅で、橋本被告は彼の陰茎を弄んだり、動画を撮影したりしていました。これについて橋本被告の弁護側は『かぶれや炎症を確認し同人に陰茎を洗わせるためでわいせつ行為には当たらない』と主張、動画についても『このような理由のため、児童ポルノ製造には当たらない』としました。
しかし、この動画では、橋本被告はD君の陰茎を指でつまんだり包皮を引っ張ったりしており、D君が痛がって『やめて』と言うと、今度は陰茎を親指、人差し指、中指でつまんで複数回前後に動かす様子が撮影されていました。
さらに、2019年9月20日、橋本被告は自宅でE君(当時5歳)の陰茎を手で弄んだ強制わいせつ罪に問われていましたが、弁護側は『スキンシップ目的であって、性的意図はなかった』と主張しました。これについても、判決では『2時間あまり後に口腔性交に及んでおり、陰茎に触れた行為も性的関心を持っていたと考えるのが自然』と簡単に切り捨てられています」(同前)
DV、いじめに苦しみ「分け隔てなく接してくれる子ども」に癒しを求めた橋本被告
荒唐無稽な主張は退けられ、起訴された56件の事件すべてで有罪が認定された。懲役20年を言い渡された橋本被告はどのような生い立ちを持つ人間だったのだろうか。前出とは別の司法担当記者が解説する。
「今年の6月に行われた被告人質問で、橋本被告は自身の不幸な半生を語りました。アルコール依存症で小学生の頃に亡くなった母親からは『おまえなんて生まれて来なければ良かった』と言われ、父親からはDVを受けていたと明かしています。
小中学校ではトイレで水をかけられるなどいじめにも遭い、自殺を考えたこともあったといいます。そのため『分け隔てなく接してくれる子ども』に癒しを求め、『男の子と接している時は安心感やぬくもりを感じた』というのが小児性愛者になった経緯だとのことでした」
法廷で「心の底から反省している。二度と子供に関わる仕事はしない」と供述した橋本被告。弁護側は「再犯の可能性は低い」と懲役10年が相当としていたが、東京地裁が出した判決は懲役20年だった。これを不服として、橋本被告は9月5日付で控訴したことが明らかになっている。
仮に橋本被告の生い立ちに汲むべき事情があったとしても、男児たちが負ったトラウマはそう簡単には癒えない。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))