英国のエリザベス女王の国葬が19日午前11時(日本時間同午後7時)にロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われ、各国、YouTubeなどでライブ配信を行い、世界中の人々が女王を見送った。
日本でも日本テレビや、TBSなどの地上波メディアが、YouTubeチャンネルを通じて、女王の国葬をライブ配信していたが、中でも力を入れていたのが、NHKだ。
総合テレビでは、『NHKニュース7』(午後7時~)を45分拡大し、国葬を生中継するだけでなく、その後『生中継 エリザベス女王国葬~愛された96年の生涯~』(午後8時15分~8時55分)を放送。女王の生涯を振り返るとともに、現地の様子を伝え、さらに同日、総合テレビ『ニュースウオッチ9』(午後9時~)でも国葬や現地での追悼の模様を伝えるという熱の入れようだった。
《厳かで、これが本物の国葬かと圧倒される》《流石の中継力だな》と肯定的な意見ももちろんあったが、気象庁が「かつて経験したことのない危険が迫っている」と呼びかけた台風14号が、日本列島に上陸中ということもあり、《公共放送なのに、日本国民の危機に関する台風よりも、なんで海外の国葬にそんなに力を入れてるの?》《国葬を中継するなとは言わないけど、せめてサブチャンネル機能使って、台風情報を詳しく流そうよ》《NHKはいつからBBCみたいになったの?》と、日本の公共放送としての姿勢を問う声も散見された。
■災害情報を放送するのは公共放送としての責務
「エリザベス女王の国葬は、日本国民も関心を示していたので、中継そのものには否定的な声はなかったと思いますが、ただNHKの番組構成には疑問を示す声も多くありました。専門家の解説もフランクな喋り方すぎて、国葬に集中できないという声や、エリザベス女王に対し、リリベットという愛称で呼ぶなど、馴れ馴れしすぎるという声もありました」(NHK関係者)
また国葬の中継の合間に挟まれた女王の過去映像なども不評の一因となっていたようで、中にはNHKの中継視聴を切り上げて、YouTubeのライブ配信で女王の国葬を視聴したというネットの声もいくつかあった。
「かつて経験したことがないと勧告されていた台風14号が通過中にも関わらず、『ニュース7』のトップニュースもエリザベス女王の国葬でした。災害情報を放送するのは、公共放送であるNHKの責務のはずなのに、なぜこれほど海外の国葬を推した報道をしてしまったのか……」(前出のNHK関係者)
NHKの日本放送協会防災業務計画には、「NHKは、『災害対策基本法』で報道機関として唯一、指定公共機関に定められ、大規模な災害が起きたときは、被災者の生命と財産を守るため、防災情報を正確・迅速に伝える責務を負っています。」(原文抜粋)と記されている。
結果的に、NHKの女王の国葬中継は、心から女王の死を悼み、見送ろうとした人々にとっても、疑問を抱かせる顛末になってしまったようだ。