台風15号の影響で24日、静岡県内は静岡市内を中心に一時最大で約11万9000戸が停電した。中部電力パワーグリッドによると、同市葵区の山間部にある2基の送電鉄塔が土砂崩れによって倒れたことが原因で、鉄塔の倒壊は異例という。同日午後4時現在、大部分で停電は復旧している。
同社によると、停電は24日午前2時ごろ発生。午前7時の最大時で、静岡市葵区で約9万9000戸▽同市駿河区で約1万7000戸▽同市清水区で約970戸――などに及んだ。
ドローンで被害状況を確認したところ、午前8時過ぎに、送電鉄塔2基の倒壊が判明した。1基は土台が崩れており、電線に引っ張られるようにもう1基が土台から倒れていた。2基とも、高さは50~60メートル程度で、1979年に造られた。昨年10月に点検した際は異常はなかったという。
同社は、倒れた鉄塔付近の電線を切断し、電力の供給ルートを変更する応急処置を講じた。これにより午後4時半現在、2700戸まで停電は縮小した。当面は問題なく電力を供給できるが、鉄塔の再建などには数カ月かかる見通し。中村佳津宏・静岡支社長は「鉄塔が山間部にあり、停電発生が深夜だったため、原因の特定に時間がかかり申し訳ない」と謝罪した。
24日午前は、静岡県庁などがある葵区中心部の交差点は信号機が消え、警察官の誘導に従い、歩行者や自転車が恐る恐る道路を渡っていた。葵区の男性会社員(38)は、勤務先があるビルの入り口付近で上司からの連絡を待っていた。「インターネットがつながらず、仕事にならない」と困惑した様子で語った。コンビニ店で食料を調達していた60代の主婦は「冷蔵庫も消え、断水も続いていて料理ができない」と話した。
停電を受け、静岡市内にある県立総合病院や静岡赤十字病院、市立静岡病院は自家発電で対応。県内23の災害拠点病院の診療に影響はなかった。【深野麟之介、山田英之】