職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。 連載の第21回は「公務員もパワハラでクビになる?」です。同僚らにパワハラやセクハラを繰り返したとして免職の処分を受けた元消防士が、処分の取り消しを求めていた裁判について解説します。 最高裁は9月13日、「処分は重すぎる」と判断した一審の山口地裁と二審の広島高裁の判断をひっくり返し、「処分は適法である」と判断しました。 世間では「公務員はクビにならない」と言われることもありますが、どのような時に免職処分が適法と判断されるのか。問題となったパワハラの内容についても、詳しく紹介します。 ●「殺すぞ」、「お前が辞めたほうが市民のためや」 これは山口県内の消防職員が、2008年4月から2017年7月までの間、同僚らに対して多数回にわたるパワハラやセクハラ行為を繰り返していたことを理由に、分限免職処分を受けたことについて、処分を受けた職員が、その処分が違法であると主張して裁判所で争っていた事件です。 その職員が行ったという行為は、裁判所において認定されている限りでも、下記の通り極めて悪質なものであるうえ、一部の行為については暴行罪に当たるとして有罪判決も受けていたため、社会的に高い注目を集めました。 (1)訓練中に蹴ったり叩いたりする、羽交い絞めにして太ももを強く膝で蹴る、顔面を手拳で10回程度殴打する、約2㎏の重りを放り投げて頭で受け止めさせるなどの暴行 (2)「殺すぞ」、「お前が辞めたほうが市民のためや」、「クズが遺伝子を残すな」、「殴り殺してやる」などの暴言 (3)トレーニング中に陰部を見せるよう申し向けるなどの卑わいな言動 (4)携帯電話に保存されていたプライバシーに関わる情報を強いて閲覧した上で「お前の弱みを握った」と発言したり、プライバシーに関わる事項を無理に聞き出したりする行為 (5)加害者を恐れる趣旨の発言などをした者らに対し、土下座を強要したり、加害者の行為を上司らに報告する者がいた場合を念頭に「そいつの人生を潰してやる」と発言したり、「同じ班になったら覚えちょけよ」などと発言したりする報復の示唆 一審と二審は、パワハラやセクハラ行為は悪質であるとしながらも、市が加害者本人に対して適切な教育をしていなかったことや、消防組織では公私にわたり職員の間で濃密な人間関係が形成され、開放的な雰囲気が従前から醸成されていたほか、職務柄上司が部下に対して厳しく接する傾向にあったことを考慮し、分限免職処分は重すぎると判断していました。
職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。
連載の第21回は「公務員もパワハラでクビになる?」です。同僚らにパワハラやセクハラを繰り返したとして免職の処分を受けた元消防士が、処分の取り消しを求めていた裁判について解説します。
最高裁は9月13日、「処分は重すぎる」と判断した一審の山口地裁と二審の広島高裁の判断をひっくり返し、「処分は適法である」と判断しました。
世間では「公務員はクビにならない」と言われることもありますが、どのような時に免職処分が適法と判断されるのか。問題となったパワハラの内容についても、詳しく紹介します。
これは山口県内の消防職員が、2008年4月から2017年7月までの間、同僚らに対して多数回にわたるパワハラやセクハラ行為を繰り返していたことを理由に、分限免職処分を受けたことについて、処分を受けた職員が、その処分が違法であると主張して裁判所で争っていた事件です。
その職員が行ったという行為は、裁判所において認定されている限りでも、下記の通り極めて悪質なものであるうえ、一部の行為については暴行罪に当たるとして有罪判決も受けていたため、社会的に高い注目を集めました。
(1)訓練中に蹴ったり叩いたりする、羽交い絞めにして太ももを強く膝で蹴る、顔面を手拳で10回程度殴打する、約2㎏の重りを放り投げて頭で受け止めさせるなどの暴行 (2)「殺すぞ」、「お前が辞めたほうが市民のためや」、「クズが遺伝子を残すな」、「殴り殺してやる」などの暴言 (3)トレーニング中に陰部を見せるよう申し向けるなどの卑わいな言動 (4)携帯電話に保存されていたプライバシーに関わる情報を強いて閲覧した上で「お前の弱みを握った」と発言したり、プライバシーに関わる事項を無理に聞き出したりする行為 (5)加害者を恐れる趣旨の発言などをした者らに対し、土下座を強要したり、加害者の行為を上司らに報告する者がいた場合を念頭に「そいつの人生を潰してやる」と発言したり、「同じ班になったら覚えちょけよ」などと発言したりする報復の示唆
一審と二審は、パワハラやセクハラ行為は悪質であるとしながらも、市が加害者本人に対して適切な教育をしていなかったことや、消防組織では公私にわたり職員の間で濃密な人間関係が形成され、開放的な雰囲気が従前から醸成されていたほか、職務柄上司が部下に対して厳しく接する傾向にあったことを考慮し、分限免職処分は重すぎると判断していました。