福岡県篠栗(ささぐり)町で2020年4月に碇翔士郎(いかりしょうじろう)ちゃん(当時5歳)が十分な食事を与えられず餓死した事件で保護責任者遺棄致死罪に問われ、1審で懲役5年の判決を受けた母親の碇利恵被告(40)の控訴審初公判が14日、福岡高裁(松田俊哉裁判長)であった。弁護側は量刑不当を訴え、検察側は控訴棄却を求めて即日結審した。判決は11月9日。
1審の福岡地裁は6月、碇被告が「ママ友」の赤堀恵美子被告(49)=同罪などで同地裁が懲役15年判決、控訴中=に生活全般を支配されていたと認定。「(碇被告が)被害者としての側面もある」などとして、求刑の懲役10年を大きく下回る懲役5年としていた。これに対し、執行猶予付きの判決を求めていた碇被告側が控訴していた。
弁護側は控訴趣意書で、碇被告が赤堀被告に心理的支配(マインドコントロール)をされていたと主張。残された碇被告の2人の子供など、家族との関係を一日でも早く再構築するためにも減軽すべきだと訴えた。弁護側はマインドコントロールを研究する心理学者らの証人尋問を要求したが、高裁は却下し、被告人質問だけを採用した。
碇被告は被告人質問で、控訴した理由を「一番は子供たちに一日でも早く会いたいという気持ちだった。ギリギリまで迷ったが、少しでも早く(家族に)会える可能性があるなら、と思って控訴した」と振り返った。有罪判決自体には「翔士郎を母親として守ってあげられなかった責任だと思っている」と述べた。
また、赤堀被告が9月にあった自身の裁判の最終意見陳述で「子供の状態が分かるのは母親(碇被告)で、全て母親の責任だと思う」と述べたことについて、碇被告が「確かに母親の私の責任だと思うが、この事件の背景に赤堀(被告)も関わっている。赤堀(被告)がそんなことを言うのは、ちょっと許せなかった」と反発する場面もあった。【平塚雄太】