子の出生届が出されず「無戸籍者」になる問題の解消を図るため、政府は14日の閣議で、子の父親を決める「嫡出推定」の民法規定を見直した上で、女性のみに設けられている離婚後100日間の再婚禁止期間を定めた規定を廃止する民法改正案を決定した。政府は今臨時国会での改正法成立を目指す。
民法は生まれてきた子と父の関係を早期に確立するため、嫡出推定を規定。妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定するとした上で、「婚姻から200日経過後」または「離婚から300日以内」に生まれた子は婚姻中に妊娠したと推定すると定める。女性が離婚直後に再婚すると、前夫と現夫の推定が100日間重なるため、別の条文で「女性は離婚から100日経過後でないと再婚できない」としている。
父子関係の安定は子にとってメリットになるが、夫の家庭内暴力や児童虐待から逃れた女性が離婚直後に別の男性との子を産んだ場合に、前夫の子と推定されたくないと出生届を出さず、子が無戸籍者となるケースが社会問題化し、今回の法改正の動きにつながった。法務省によると、2022年8月現在、無戸籍者793人のうち71%に当たる563人が嫡出推定を原因に挙げているという。
改正案では、離婚から300日以内に生まれた子でも、再婚後なら現夫との子と推定するとした。この結果、前夫と現夫の推定が重なる期間がなくなることから、再婚禁止期間の条文を削除する。
また、嫡出推定を覆すことができる制度として父だけに認められている「嫡出否認」の訴えの規定も見直し、子や母も訴えることができるようにする。現行制度では、1年以内に限って訴えを起こせるが、改正案は3年以内に延ばす。施行日以後に生まれる子に適用されるが、施行日から1年間に限って、施行日前に生まれた子も否認できる。
一方、改正案では、児童虐待を防止するための手立ても講じられた。民法は「親権者は監護・教育に必要な範囲内で子を懲戒することができる」と懲戒権の規定を設けているが、親による虐待の口実に使われることがあるとの指摘があるため、条文から削除する。その一方で「子の人格の尊重」「子の年齢・発達への配慮」「体罰の禁止」を明記し、子育てや教育のルールを盛り込んだ。
葉梨康弘法相は14日の閣議後記者会見で、「子の利益の保護につながると期待している。この国会において成立を図りたい」と述べた。【山本将克】