千葉県襲った大雨被害から3年 治水対策進む 課題は〝共助〟

千葉県内に甚大な被害をもたらした令和元年の大雨被害から25日で3年。一宮川やその支流の鶴枝川、豊田川などが流れる茂原市では、河川の氾濫(はんらん)により3000棟以上の家屋が浸水し、2人が死亡するなどの被害が出た。県は同市内で護岸の工事や調節池の増設を進めているが、被害を最小限に食い止めるためには、住民の意識向上を含め、地域一体となった対策が急務だ。
「雨が降るといつも心配になる」。そう語るのは、一宮川下流域の睦沢町に住む麻生和雄さん(75)。子供のころから水害を何度も経験してきたという。「最近、異常気象が多いと感じる。被害を抑えられるように、行政には頑張ってもらいたい」と訴えた。
2級河川の一宮川を管理する県は、2年4月、茂原市内に一宮川改修事務所を設立。「家屋や主要施設の浸水被害ゼロ」を11年度末までに達成する目標を掲げた。
昨年秋ごろには、河川の流水が流れ下る部分である「河道(かどう)」の断面を拡大するため、一宮川中流域沿いに続く桜並木の伐採を開始。約4キロの桜並木は地域で親しまれ、「春の風物詩」となっていたが、近隣住民への説明会などで理解を得たという。現在は桜の木5本を残し、「護岸法(のり)たて」という工事を進めている。県担当者によると、これは河道を掘削し護岸の勾配を急にするもので、洪水の抑制につながるという。
桜の伐採について近隣に住む40代女性は「残念だけど、浸水被害を防ぐためなら仕方ない」。80代女性は「悲しいけど、工事を進めて少しでも被害を抑えてほしい」と一定の理解を示した。
このほか、一宮川については瑞沢川との合流点から鶴枝川との合流点までの河道を約50メートルから約70メートルに拡幅する工事も開始している。
増設した一宮川第2調節池は今年8月末から、もともとの貯留容量70万立方メートルに増設分の約25万立方メートルを加え、暫定的に運用されている。県が行ったシミュレーションでは、これらの対策などにより、令和元年と同様の豪雨が降っても、茂原市街地における浸水被害を抑えられるという。
同事務所によると、護岸法たてと河道拡幅工事は6年度末に完了する見込みで、工事費約150億円のうち、国と県が半分ずつ負担。また、茂原市は排水施設の整備や排水路の改修、一宮町は排水ポンプ施設の強化など、内水氾濫(雨が河川に流れず氾濫すること)の抑制を進めている。
浸水被害を防ぐためには河川流域の住民らが協力して水災害対策を行う「流域治水」も欠かせない。同事務所は大雨被害や流域治水についての取り組みをまとめたポスター展を長生村のスーパーで今月18日まで開催。水田に水を貯める「田んぼダム」や家庭でできる浸水対策を紹介するなど、防災意識の向上を促す取り組みも行っている。
熊谷俊人知事は今月20日の会見で、「インフラ整備などの公助は確実に前進している」と強調。そして、「被害最小化のためには、自主防災組織や消防団など、さまざまな共助の仕組みが非常に大きな部分になってくる」と指摘した。(久原昂也)