問われる著作権の利用と保護、「積極徴収」の流れに一石 音楽教室訴訟判決

音楽教室のレッスンで行われる生徒の演奏に、著作権料を支払う必要はない-。日本音楽著作権協会(JASRAC)と音楽教室側が争っていた訴訟で、最高裁が24日、こんな判断を下した。著作権保護の意識が高まる中、積極的に進められてきた著作権料の徴収に歯止めをかけた形。著作物の保護と適切な利用とのバランスを考える上で一石を投じた判決といえる。(原川真太郎、宇都木渉)
「音楽文化を支える演奏者は、ほとんど教室から生まれている。もし(生徒の演奏で著作権使用料の徴収が)認められれば、影響は大きかった」
判決後、原告側を代表して記者会見したヤマハ音楽振興会の大池真人常務理事は、安堵(あんど)の表情を浮かべた。
著作権を巡っては平成12年、録音物の再生に著作権が及ぶ範囲をディスコなど特定の施設に限るとする規定を撤廃した改正著作権法が施行された。こうした動きを受けて、JASRACは23年にフィットネスクラブ、24年にはカルチャーセンターの事業者から著作権料の徴収を開始するなど、対象を拡大していった。
これに対し、今回争点となった音楽教室での生徒の演奏について最高裁は、生徒の演奏が技術向上のために「任意かつ自主的に演奏」されるものだと強調。著作権料が徴収できるとした教師の演奏とは、一線を画したものだとした。
JASRACによると、著作権料徴収の対象となる音楽教室は控訴審段階で推定6782教室、徴収額は年間で3億5千万~10億円を見込んでいた。この金額は、生徒が演奏する分を多く見込んでいるとみられる。
今回の最高裁の判断を受けて、独自調査をもとに算出したという受講料収入の「2・5%」という使用料率は、見直しを迫られることになりそうだ。
判決後に記者会見したJASRACの伊沢一雅(かずまさ)理事長は「生徒の演奏部分については主張が認められず、誠に残念」とした上で、「原告の皆さまのお考えもあると思うが、(徴収額について)話し合いを進めることになると考えている」と話した。
ヤマハ音楽振興会の大池常務理事も「レッスンの実態に合わせた適切な額にしたい」と述べた。