「ルビンの壺」で無罪主張も マスク拒否の被告に懲役4年求刑

格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーション機内でマスク着用を拒否した上、客室乗務員を負傷させて運航を妨害したなどとして、傷害や威力業務妨害などの罪に問われた元大学職員、奥野淳也被告(36)に対する論告求刑公判が26日、大阪地裁(大寄(おおより)淳裁判長)で開かれた。検察側が懲役4年を求刑したのに対し、弁護側は無罪を主張して結審した。判決は12月14日。
奥野被告はこれまでの公判に続いてノーマスク姿で出廷。証言台を囲うようにアクリル板のついたてが設置された。
最終意見陳述の冒頭、奥野被告は「ここに1枚の絵があります」と「ルビンの壺」が描かれた紙を掲げた。「事前に与えられた情報によって絵の見え方が変わる。マスク不着用は非常識でモラルに反するという偏見のまなざしで見て、同調圧力による軋轢(あつれき)を生んできたのではないか」と述べた。
その上で、「私は無罪であり、無実です。健康上の事情に照らしてマスクの着用を選択する権利はある」と主張し、「マスク着用の求めに応じなかったことを大変誇りに思っています」などと語った。
検察側は論告で、奥野被告が降機を求められた原因はマスクの不着用ではなく、客室乗務員の指示に従わず大声を出し続けるといった「機内の秩序を乱した行為」と指摘。「粗暴で悪質な行為で、反省も期待できない」と指弾した。
一方、弁護側は「粘り強く質問を繰り返しただけ」と暴行を否定した上で、「客室乗務員が『迷惑』と感じたからといって業務を妨害したとはいえない」と無罪を訴えた。
起訴状などによると、奥野被告は令和2年9月、釧路発関西国際空港行きの機内で客室乗務員にマスク着用を求められたが拒否。付近の乗客からとがめられると激高し、客室乗務員の腕をねじって負傷させ、新潟空港に緊急着陸させて業務を妨害したなどとしている。飛行機は新潟空港で奥野被告を降ろした後に再度離陸し、関空には約1時間40分遅れで到着した。
また、奥野被告は3年4月に、千葉県館山市内の飲食店でマスク着用の求めを拒み、大声で怒鳴ったり店員を転倒させたりしたともされる。

ルビンの壺 心理学者が考案した壺のような形の図形。図形に注目すると壺に見えるが、背景に注目すると向かい合った2人の横顔に見える。人のものの見方によって、同じものでも意味合いが変わることを示している。