佐藤優氏 西側の悪魔崇拝を非難するプーチン 危険な「価値戦争」を止めなければならない

5日の「朝日新聞」がこんな記事を報じていた。<ウクライナ侵攻で苦戦するロシアで、プーチン政権内で、侵攻を「聖戦」のように正当化する発言が目立ってきた。ウクライナや欧米を「悪魔」と批判し、「非サタン化」が必要だと主張している。/ロシア「国民統合の日」の祝日だった4日、前大統領のメドベージェフ国家安全保障会議副議長はSNSでこんな投稿をした。/「創造主の言葉が我々に神聖な目的を与えた。地獄の支配者、サタンや大魔王の阻止だ。彼らの目的は破壊で、我々は命。だから勝利は我々のものだ」>
このこと自体はニュース性がない。なぜなら9月30日の演説でロシアのプーチン大統領が西側は悪魔崇拝を行っていると非難しているからだ。プーチン氏の発言を引用する。
<私たちは、小学校から学校で、子どもたちが劣化や絶滅につながる倒錯にさらされることを望んでいるのでしょうか。男性と女性以外に性別があることを教え、性転換手術を受けさせるのか? これが私たちの国や子どもたちのために望むことなのでしょうか? このようなことは、私たちには受け入れられません。私たちには、自分たちの別の未来があるのです。繰り返しますが、西側エリートの独裁は、西側諸国の国民を含むすべての社会に向けられています。全員への挑戦状です。このような人間の完全否定、信仰と伝統的価値の破壊、自由の抑圧は、「宗教を逆手に取った」、つまり完全な悪魔崇拝の特徴を帯びているのです。イエス・キリストは山上の説教の中で、偽預言者を糾弾し、「その実によって、あなたがたは彼らを知る」と言われました。そして、これらの毒の実は、わが国だけでなく、欧米の多くの人々を含むすべての国の人々にとって、すでに明白なことなのです。>(9月30日「ロシア大統領府」HP)
以前よりプーチン氏は同性愛に否定的だったが、この見解をさらに推し進め、伝統的家族観に反する価値観を悪魔崇拝の特徴を帯びていると述べるに至っている。
悪魔崇拝を行っている西側に対し、正しいキリスト教(正教)的価値観を保持するロシアが戦っているという価値観戦争を強調しているのだ。ウクライナ戦争に関して米国を中心とする西側連合は民主主義VS独裁、ロシアは正しいキリスト教(正教)VS悪魔崇拝という二項対立を立てている。
価値観戦争は一方が他方を殲滅するまで終わらない。それで死ぬのは無辜の市民だ。この危険な価値観戦争を直ちに止めさせる必要がある。
☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2002年5月、背任容疑などで逮捕され、09年6月に執行猶予付き有罪判決が確定した。20年、「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は「よみがえる戦略的思考 ウクライナ戦争で見る『動的体系』」(朝日新書)がある。