人気の「トレカ」販売会社と前社長を脱税容疑で告発、法人税約4500万円脱税か

法人税約4500万円を脱税したとして、東京国税局がトレーディングカード(トレカ)販売会社「カードラボ」(東京都板橋区)と西浦恵一郎・前社長(47)を法人税法違反容疑で東京地検に告発したことがわかった。西浦前社長は脱税で得た資金を私的に流用したとみられ、同社は会社法違反(特別背任)容疑で東京地検に告訴する方針。
カードラボは、アニメグッズ販売会社「アニメイト」(東京)のグループ会社。コロナ禍の巣ごもり需要でトレカ人気が高まり、売り上げを伸ばしていた。取材に、「不祥事をおわびし、社内体制の再チェックに努める」としている。
関係者によると、カードラボは「ポケモン」や「遊戯王」などのトレカの販売や、中古トレカの売買などで多額の利益を上げてきたが、西浦前社長はトレカ収集家の知人男性から希少価値のある「レアカード」を買い取ったなどと偽装して架空の仕入れ代金を計上。2021年10月期までの約3年間に計約1億5300万円の法人所得を隠し、法人税約4500万円の納税を免れた疑い。
西浦前社長は、虚偽の請求書や領収書を作成し、トレカの購入代金として知人男性の口座に送金を行うよう経理担当者に指示していた。経理担当者が不審に思って疑問を呈したこともあったが、西浦前社長はそのまま送金するよう重ねて求めたという。
送金させた金のうち数%は知人男性の取り分で、残りは西浦前社長の個人口座に還流していた。脱税で得た資金は西浦前社長が自身の生活費や交際費、趣味のワインの購入費などに充てていたとみられる。
西浦前社長は16年3月から同社社長を務め、同国税局が査察(強制調査)に入った今年5月に解任された。同社によると、内部調査の結果、西浦前社長が個人的に得た資金は総額約2億5000万円に上ることが判明したという。
同社は既に修正申告と納税を済ませたとしている。不正を防げなかった責任があるとして一部の取締役を減給処分とし、仕入れや経費支払いなど社内手続きの見直しも行った。
民間信用調査会社などによると、カードラボは04年設立。現在は全国の約35店舗でトレカの販売やゲーム大会の開催などを行っている。売上高は16年の約26億円から伸長し、21年10月期は約45億円に上った。
読売新聞は西浦前社長に文書で取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。
コロナ禍で市場規模拡大、1000万円超のカードも

コロナ禍でトレカの市場規模は拡大している。
日本玩具協会によると、昨年度のトレカ・カードゲームの市場規模は約1782億円で、9年前の2012年度から2倍近くに増えた。人混みを避け、家で楽しめる遊びとして人気が高まっているとみられる。
業界誌「月刊トイジャーナル」の藤井大祐編集長によると、日本でトレカが流行し始めた1990年代に小中学生として親しんだ世代が子育て世代になり、子どもと一緒に楽しむ人が増えている。自由に使えるお金が増え、大量購入する「大人買い」も市場を支えているという。
トレカは、複数枚がランダムに封入されて販売されるのが一般的だ。このため、不要になったカードなどが中古品市場に出回り、盛んに売買されている。
希少なレアカードなどを投機目的で売買する人も少なくないとみられ、中には専門店のサイトで1000万円以上の値が付く中古のポケモンカードもある。
藤井編集長は「子どもの人気だけでなく、大人がブームを引っ張っており、人気はしばらく続くのではないか」と話している。
◆トレーディングカード=ゲームやアニメのキャラクター、スポーツ選手のプレー写真などがある。店舗で買うなどして収集したり、仲間と交換(トレード)したりして楽しむほか、カードゲームで遊べるものもある。