東京消防庁は6日、特殊詐欺の現金受け取り役の受け子として、警視庁石神井署に今年11月、詐欺容疑で逮捕された野方消防署消防士の一戸(いちのへ)赳児(きゅうじ)容疑者(23)が、消防署に保管されている高齢者の名簿をコピーして持ち出していたと明らかにした。警視庁は名簿が特殊詐欺に使われた可能性もあるとみている。
一戸容疑者は今年8月29日、東京都練馬区の80代の女性宅に、弟などになりすまして「仕事に失敗し、損失が出た」などと電話をかけ、女性から現金110万円などをだまし取った疑いで逮捕された。
一戸容疑者は、現金欲しさにSNS(交流サイト)の書き込みを見て、受け子に応募したと説明。警視庁が東京消防庁の寮にある一戸容疑者の居室を捜索したところ、中野区が作成して野方消防署に提供した災害時に支援が必要な高齢者名簿のコピーが見つかったという。
名簿には70歳以上の単身世帯や75歳以上の住民のみで生活する世帯の氏名や住所が記録されていた。東京消防庁によると、名簿は通常、施錠した格納庫に保管されているが、一戸容疑者は令和2年秋から半年ほど名簿の管理に携わる部署にいて、開錠方法を知っていたとみられるという。