役員報酬「月2億5000万円」は不相当に高い? 関西の味噌会社が「経費不認定」の処分取り消し求めて提訴

中国で知名度の高い味噌を作っている食品グループの企業が、国(国税当局)を相手取り、約3億8500万円の課税処分の取り消しを求めて、裁判で争っている。 当局は、この企業が2人の役員に支払った役員報酬の大半を「不相当に高額」と判断。法人税の減少につながる経費として認めなかったが、同社は「役員の働きに見合う適正な金額」と真っ向から対立中だ。 裁判は、役員報酬を企業が自分たちの裁量で決められないのか、国税当局が一定の線引きをすべきかを問うている。(ジャーナリスト・富岡悠希) ●原告は「松井味噌」のグループ企業 原告は、京都市にある「京醍醐味噌」。同社は、中国に5工場を構え、模造品が出るほどのブランド力を持つ「松井味噌」(兵庫県明石市)のグループ企業だ。 1914年(大正3年)創業の松井味噌は、3代目社長の松井健一さん(58)のもと、1990年代に中国・大連に進出。日本より大幅に安い大豆や米、塩などを使い、味噌関連製品を作り始めた。大連のインフラは未整備でトラブルは絶えなかったが、1990年代後半に軌道に乗せた。 1980年代後半に松井さんが父親から経営を引き継いだとき、松井味噌の年商は約2億円だった。それが2020年度には約80億円まで成長している。 海外進出や企業買収に乗り出す松井さんは、アグレッシブな経営姿勢をこう説明する 「僕は成功するためにリスクを取りに行くのが好き。失敗もあるけど、それは次に生きる。日本より変化の早い中国では、そうでないと勝てない」 ●ベトナム事業の成功を見越して「月2億5000万円」の役員報酬を提示 そんな松井さんは2010年代前半、国内で甘酒・塩麹ブームが起きたときにも動いた。多くの食品会社が国内で需要に対応しようとするのと一線を画し、ベトナムで麹の醸造品を生産し、日本へ輸入するやり方を探った。味噌製品も作るつもりだった。 2015年、京醍醐味噌が保有する上場企業株の一部を売ることで、事業資金約20億円を確保。醸造品用の生産設備も中古で手に入れることにし、ベトナムの工場建設地のメドも付けた。250億円分の為替予約もした。 松井さんは、ベトナム事業を「初年度から利益30億円、5年後には年間100億円の利益をうむ」ほどの好採算と見立てた。 事業責任者には、弟(55歳)を立てた。弟は松井味噌グループの1社で、加工食品のファブレス事業に成功していた。工場(Fab)がない(Less)、生産設備を持たない経営方式だ。
中国で知名度の高い味噌を作っている食品グループの企業が、国(国税当局)を相手取り、約3億8500万円の課税処分の取り消しを求めて、裁判で争っている。
当局は、この企業が2人の役員に支払った役員報酬の大半を「不相当に高額」と判断。法人税の減少につながる経費として認めなかったが、同社は「役員の働きに見合う適正な金額」と真っ向から対立中だ。
裁判は、役員報酬を企業が自分たちの裁量で決められないのか、国税当局が一定の線引きをすべきかを問うている。(ジャーナリスト・富岡悠希)
原告は、京都市にある「京醍醐味噌」。同社は、中国に5工場を構え、模造品が出るほどのブランド力を持つ「松井味噌」(兵庫県明石市)のグループ企業だ。
1914年(大正3年)創業の松井味噌は、3代目社長の松井健一さん(58)のもと、1990年代に中国・大連に進出。日本より大幅に安い大豆や米、塩などを使い、味噌関連製品を作り始めた。大連のインフラは未整備でトラブルは絶えなかったが、1990年代後半に軌道に乗せた。
1980年代後半に松井さんが父親から経営を引き継いだとき、松井味噌の年商は約2億円だった。それが2020年度には約80億円まで成長している。
海外進出や企業買収に乗り出す松井さんは、アグレッシブな経営姿勢をこう説明する
「僕は成功するためにリスクを取りに行くのが好き。失敗もあるけど、それは次に生きる。日本より変化の早い中国では、そうでないと勝てない」
そんな松井さんは2010年代前半、国内で甘酒・塩麹ブームが起きたときにも動いた。多くの食品会社が国内で需要に対応しようとするのと一線を画し、ベトナムで麹の醸造品を生産し、日本へ輸入するやり方を探った。味噌製品も作るつもりだった。
2015年、京醍醐味噌が保有する上場企業株の一部を売ることで、事業資金約20億円を確保。醸造品用の生産設備も中古で手に入れることにし、ベトナムの工場建設地のメドも付けた。250億円分の為替予約もした。
松井さんは、ベトナム事業を「初年度から利益30億円、5年後には年間100億円の利益をうむ」ほどの好採算と見立てた。
事業責任者には、弟(55歳)を立てた。弟は松井味噌グループの1社で、加工食品のファブレス事業に成功していた。工場(Fab)がない(Less)、生産設備を持たない経営方式だ。