甚大な被害をもたらした台風15号から3か月が経過した。寝たきりの高齢者などの避難が難しいとされる中、静岡市清水区内の高齢者施設は浸水したが、避難計画や日頃の訓練が功を奏し、入所者は無事だった。最悪の事態は逃れたが、避難開始のタイミングなど課題が浮き彫りになった。(中島和哉)
「水が来ます。避難の準備をしましょう」。激しい雨が小康状態になった9月24日午前0時頃、清水区長崎新田の特別養護老人ホーム「有度の里」の栗田健三所長(40)は、入所者に呼びかけた。インターネットの情報で、再び強い雨になると確認していた。
施設は、近くの巴川が洪水した場合に1~3メートル未満の浸水が予想される低地にある。2003年の開所以降、2度の床上浸水の経験から、毎年、浸水を想定した避難訓練を実施してきた。
浸水の恐れがある1階に入所する高齢者約40人のうち、ほとんどが車いすでの移動が必要で、8人は寝たきり。避難には相当時間がかかることは、職員で共有できていた。
浸水前に入所者を起こして車いすに乗せ、午前1時、2階に避難を始めた。職員9人で、認知症患者の見守り、エレベーターの乗降補助などを分担して誘導した。30分後に浸水が始まり、エレベーターも停止。水位が上がる中、職員は入所者を抱えてあがった。
状況を見て、寝たきりのうち4人は1階にとどめた。昇降式ベッドを最大の高さまで上げ、マットを数枚重ねた。水はベッドの高さ寸前で止まった。栗田所長は「訓練のおかげで職員も冷静に対応できたが、ギリギリだった。避難のタイミングが課題」と振り返る。
高齢者の福祉施設などが浸水の恐れがある地域にある場合、避難経路などを記した避難確保計画の作成が義務付けられている。国によると、洪水浸水想定区域内にある県内3692施設のうち、3月末時点で92・3%の3407施設が作成していた。全国平均(82・8%)より高いが、計画の実効性を高める必要がある。
同志社大の立木茂雄教授(福祉防災学)は「注意報の段階からやるべきことを時系列で決めておくことが大事だ。今回を教訓に各施設は計画や訓練の内容の改善を図ってほしい」と指摘している。