岸田文雄首相は23日、衆参両院の本会議で施政方針演説を行った。「今、われわれは再び歴史の分岐点に立っている」といい、安全保障環境の悪化に対峙(たいじ)する「防衛力強化」や、出生率を反転させる「次元の異なる少子化対策」を掲げた。財源は明示しなかったが、「増税」や「社会保険料引き上げ」が想定されており、野党は「増税隠し」と批判している。国民所得に占める税や社会保険料の割合である「国民負担率」は5割に迫り、日本経済の活力低下も懸念される。報道各社の世論調査で、一部の内閣支持率が政権維持の「危険水域」とされる3割を割り込むなか、岸田首相は説明責任を果たして、国会や国民を納得させられるのか。
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「将来世代に先送りすることなく、2027年度に向けて、今を生きるわれわれが、将来世代への責任として対応してまいります」
岸田首相は23日の施政方針演説で「防衛力強化」の財源について、こう語った。昨年末の税制改正大綱で「法人税・所得税・たばこ税の増税方針」を決めたはずだが、演説には「増税」の2文字はなかった。
自民党内でも「防衛増税」に異論が根強いため、言及しなかったのではないかとの憶測もある。当然、野党は反発し、立憲民主党の泉健太代表は「増税隠しだ」と批判した。
もう一つの目玉政策は「少子化対策」である。岸田首相は、子供政策が「最も有効な未来への投資だ」と力説して、児童手当拡充などを念頭に具体策の検討を進めるとした。
ただ、その費用をどこから捻出するかについては、「各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、さまざまな工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります」と説明するにとどめた。
日本経済新聞は24日朝刊1面で、「首相、少子化対策3本柱」「財源に社会保険料想定」との見出しで報じた。記事では、政府内で「保険制度から少しずつ拠出して財源に充てる案はあるが、保険料引き上げのような負担増だけでまかなうのは限界がある」と説明した。
ちなみに、岸田首相に近い自民党の甘利明前幹事長は今月5日、「(少子化対策の財源は)将来の消費税(増税)も含め、地に足をつけた議論をしないといけない」とテレビ番組で語っている。
岸田首相の施政方針演説をどうみるか。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「岸田政権は『子育て』と『防衛』を掲げれば、支持を得られると思っていたのだろうが、財源が『増税』や『社会保険負担の増加』によって賄われることを国民は分かっている。具体的で丁寧な説明もなく、増税を小出しに進めようとする財務省の言うがままで、岸田首相は『官僚に聞く耳を持つ』だけだ。岸田政権は庶民感覚とかけ離れた『異次元の内閣』といわざるを得ない」と批判する。