昨年12月31日未明に山形県鶴岡市西目で発生した土砂崩れから1カ月。救助された加藤省一さん(77)は、土砂崩れを通報し救助につなげた同市大山の団体職員、山口大樹さん(42)らと市役所で会い、「やっと御礼が言えた。これで正月が迎えられる」と述べ、胸のつかえを降ろした。
土砂崩れ後、被災者と通報者が会うのは初めて。「通報者に会って御礼をいいたい」と加藤さんが強く求めていたことが実現し、同席した皆川治市長に促されるように「ずっとお礼を言うことを思い続けて来た。これで前に進める」と思いを打ち明けた。
「ゴーッ、バリバリバリッ」という音とともに木造2階の自宅で寝ていた加藤さんを襲ったのは裏山の土砂だった。幸いにも2階の天井が剥がれ、気が付くと雨が降る中、ベッドの上で空を眺めていた。屋根の部材などに妨げられ、体は動かなかった。
一方、現場にたまたま車で通りかかった山口さんと、同じ大山の会社員、大滝修一さん(42)は、道を塞ぐ土砂に驚いて急停車し、午前0時57分に110番通報。警察や消防が10分ほどで駆け付け、「助けてくれー」と叫ぶ加藤さんの声に「いま助けるぞ」と応えた。
加藤さんは救助されるまでの2時間で低体温症に。以前から心臓が弱く、搬送された病院の医師に「これ以上遅かったら危なかった」と言われたという。
その後、通報者に感謝をを伝えたいと思い続けていた加藤さん。1カ月後にそれがかない、「きょうは〝大晦日〟です。家に帰ってそばを食べ、〝正月〟の明日は餅を食べます」としみじみ語った。
山口さんらは「通報できたのも偶然かと思ってきたけど、そうでもない。意味があると感じている。加藤さんにお会いでき、よかった」と笑顔だった。
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土砂崩れで亡くなった市民2人を悼み、鶴岡市役所ではこの日正午ちょうどに全職員が黙を行った。国は同日、緊急対策費に約9億円を追加。皆川治市長は、土砂に流入する水量を調べるモニタリング調査を県とともに行い、対策事業を進める方針を示した。