徳島県藍住(あいずみ)町が発注した学校給食用の牛肉調達事業の随意契約を巡り、競合他社の見積価格を業者に漏らしたとして、大阪府警と徳島県警は13日、副町長の奥田浩志容疑者(64)ら3人を官製談合防止法違反や公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕した。副町長は逮捕前、町長に事件への関与を認め、「見返りはもらっていない」と説明したという。府警は金品授受の有無を含めて実態解明を進める。
他に逮捕されたのは、漏えいを仲介したとされる前町議会副議長の平石賢治(46)=議員辞職=と、徳島県松茂町の食肉販売業「阿波牛の藤原」代表の藤原誠(44)の両容疑者。2人は以前からの知り合いだったが、奥田副町長と藤原容疑者は面識がなかった。
平石容疑者は2022年12月、捜査当局から町役場に照会があった捜査情報について、大麻密売グループに漏らした見返りに現金5万円を受け取った加重収賄容疑などで逮捕、起訴された。大阪府警がこの汚職事件の捜査を進める過程で、今回の不正が発覚した。
奥田副町長と平石容疑者は共謀して20年10月、給食用として使う地元ブランド牛「阿波牛」の納入に絡み、競合する5社の見積価格のうち最低額を藤原容疑者に漏らし、公正な契約を妨害した疑いが持たれている。藤原容疑者は最低額を81円下回る1キロ4899円で見積書を提出し、契約を取り付けた。府警は3人の認否を明らかにしていない。
藍住町では現在、町立幼稚園や小中学校計10校で給食を導入。複数の業者が毎月、牛や豚、鶏の単価の見積もりを出し合い、町教育委員会が最低価格を提示した業者と月ごとに随意契約する仕組みになっている。
府警捜査2課などによると、奥田副町長は給食事業の決裁権者で、藤原容疑者が知人の平石容疑者を通じて漏えいを働き掛けたとみられる。ただ、競合他社が示した見積価格は教育委員会で厳重に管理されていたとされ、奥田副町長がどのように価格情報を入手したか分かっていない。
藤原容疑者の会社は20年4月から町の給食事業に参入。22年12月までに計37回見積書を提出し、約7割に当たる26回の受注に成功していた。府警は過去の一連の契約についても詳しい経緯を調べている。
奥田副町長は1982年に入庁し、下水道課長や町教委の社会教育課長などを歴任。18年1月から副町長として町教委や建設などの業務を担当していた。
高橋英夫町長は13日午後に町役場で記者会見し、「昨年の不祥事に続き町政への信頼を著しく失墜させることになり、深くおわび申し上げます」と陳謝した。【木島諒子、砂押健太】