21日に中国に返還される上野動物園のジャイアントパンダ、シャンシャン(雌、5歳)が19日、最終観覧日を迎えた。最高倍率70倍(2600人当選)を通り抜けた来園者は、思い思いに「会えてよかったよ」「元気でね」などと声をかけ、最後のひとときをかみしめた。多くの人々に癒やしや喜びを与えたシャンシャンは、21日に中国へ出発する。
上野で生まれて2078日。多くの人に愛されたアイドルパンダがファンに別れを告げた。
最終枠で当選番号100をゲットした品川区在住のデザイナー・水口奈津季さん(37)は「本当に帰っちゃうんだなと心が空っぽになりました」と目に涙を浮かべた。
一緒に訪れた母親によると、水口さんはオランダに移住していたが体調を崩し帰国。スマホもテレビも見ることができない状態だったが、シャンシャンに会うことで体調は回復していったという。「シャンシャンは娘の命の恩人です」と感謝していた。
昨年11月から都内に滞在し、上野通いを続けた岡山市の主婦・中村恵子さん(59)は「シャンシャンなしでは生きられないかも」と涙ぐんだ。川崎市の会社員・石井由香さん(50)は「かわいかった。中国でいい男を見つけてね」とエール。台東区の小学1年・曽我俊太朗くん(7)は「いつか帰ってきて」と、再会の日を信じていた。
シャンシャンは2017年6月に誕生し同園で初めての自然繁殖に成功。「上野生まれ」は1988年のユウユウ以来29年ぶりで、17年12月の一般公開は初日の申し込みが約46倍となるなど大ブームとなった。この日は立ち上がったり、前足と口を使って竹の皮を器用に剥がし、ムシャムシャと食べたりと元気いっぱい。一挙手一投足に来園者から歓声が上がった。
同園の大橋直哉教育普及課長は「普段より活発だった。サービス精神満点なので、(最終日だと)感じていたのかもしれない」と推し量った。多くの観覧者の姿に「シャンシャンを愛する気持ちがひしひしと伝わった。私も感動したが、飼育のプロとしてシャンシャンを無事に中国に送り届けたい」と意気込んだ。
観覧が終わり、シャッターが閉まり始めた。シャンシャンは、背を向けたままだった。(太田 和樹)