林芳正外相〝外交的失態〟の甚大さ 答弁たった1回で「53秒」のみ…予算委員会優先でG20欠席、QUADには出席 「日本の地位低下が懸念」岩田温氏

林芳正外相がインドで3日に開催される、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の外相会合に出席する方向になった。ただ、同地で1日に開幕したG20(20カ国・地域)外相会合(2日まで)を欠席した「外交的損失」は甚大だ。専門家も「世界情勢が激変しているなか、日本の地位低下が懸念される」と批判した。
G20外相会合には、アントニー・ブリンケン米国務長官や、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相、中国の秦剛外相ら、各国外相が参加した。
ロシアによるウクライナ侵略や、中国が覇権主義的活動を強める東・南シナ海の情勢、食料・エネルギー安全保障など、安全保障に関わる重要議題を討議する。G7(先進7カ国)の議長国である日本は米国と連携して、「自由」「民主」「人権」「法の支配」という価値を、G20諸国と共有する立場だった。
ところが、林氏はG20外相会合を欠席した。参院予算委員会で1、2両日、首相以下、全閣僚の出席が慣例である基本的質疑が行われるためだ。自民党や立憲民主党など与野党が出席を求めていた。何と、1日の林氏の答弁はたった1回で「53秒」のみだった。
林氏のG20外相会合欠席については、ホスト国であるインドの地元メディアも「信じがたい動き」(ヒンドゥスタン・タイムズ紙)などと批判的に報じている。
林氏はクアッド外相会合には参加することになったが、G20参加国に「日本はG20よりクアッドを重視するのか」という疑念を呼びかねない。
政治学者の岩田温氏は「国際情勢が激動するなか、日本の地位が軽視されかねず、とても看過できない。G20外相会合を欠席したことで、これまで日本が『中国の脅威』を訴えていたのは『本気ではなかったのか』と、参加各国に間違ったメッセージを送ることになる。日本の外交にも悪影響を与える。クアッドへの出席は当然だ。日本だけが旧態依然としたルールに縛られている。国会を軽視してもいいと言うわけではないが、与野党ともよく考えるべきだ」と語っている。