刑事裁判で「無罪」確定したのに県は免許取り消したまま…地裁「事実を誤認した処分は無効」

刑事裁判で無罪判決が確定後も、運転免許取り消しの行政処分が維持されているのは不当として、福岡市の女性(44)が福岡県に処分の無効確認を求めた訴訟で、福岡地裁(林史高裁判長)は15日、処分の無効を認めた。原告側の代理人によると、無効が認められるのは極めて異例という。
判決によると、女性は2017年2月、同市でトラックを運転中に原付きバイクと衝突し、バイクの少年が重傷を負った。県公安委員会は同12月、県警の捜査を基に女性の運転免許を取り消した。
女性は自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)で在宅起訴されたが、福岡地裁は20年5月、バイクの不適切な運転が原因だった可能性があるとして無罪を言い渡し、検察側が控訴せずに無罪が確定。しかし、県公安委は「処分に明白な 瑕疵 (かし)はない」として処分は撤回しなかった。
県側は訴訟で、「刑事処分と行政処分は別だ。(刑事の判決は)不合理な点が多々ある」などとし、女性に過失があったと主張したが、判決は、防犯カメラの映像などから被害者にも過失があり、処分の主な理由となった著しい不注意が女性にあったとは認められないと指摘。事実を誤認した処分で女性に不利益を受けさせることは不当だとし、処分は無効だと判断した。
女性は記者会見し、「当たり前に免許が返ってくると思っていたのに裁判となり、県の対応に疑問を持ちながら、闘い続けた。制度は変わってほしい」と話した。県警は「判決内容を精査した上で、適切に対処したい」としている。