熊本県芦北町で2020年11月、死産した双子の遺体を遺棄したとして死体遺棄罪に問われたベトナム人の元技能実習生、レー・ティ・トゥイ・リン被告(24)の上告審で、最高裁第2小法廷は24日、有罪とした1、2審判決を破棄し、逆転無罪とする判決を言い渡した。遺体を段ボールに入れて自宅の棚に置いた行為が遺棄に当たるのか否かが争点だったが、草野耕一裁判長は「習俗上の埋葬と相いれない処置とは認められない」と述べ、罪の成立を否定した。裁判官4人全員一致の意見。
最高裁によると、1980年以降で最高裁が1、2審の有罪判決を破棄して無罪を言い渡すのは25人目。レーさんの無罪が確定する。レーさんは判決後、「妊娠して悩んでいる技能実習生らに刑罰を加えるのではなく、安心して出産できる環境に日本が変わってほしい」とコメントした。
レーさんは18年8月に技能実習生として来日し、ミカン農家で働いていたところ妊娠し、自宅で双子を死産した。遺体をタオルに包み、おわびの言葉を記した手紙とともに二重の段ボール箱に入れてテープで封をして棚に置いた。検察側は「出産が周囲にばれれば帰国させられると思い、遺体を隠そうとした」と主張していた。
小法廷は、死体遺棄罪は社会的な習俗に従って遺体を埋葬することで死者を敬う感情を保護することを目的にすると指摘し、遺棄に当たるのは「習俗上の埋葬とは認められない態様で遺体を放棄または隠す行為だ」とする初判断を示した。その上で、レーさんは遺体を隠して発見を困難にはしたものの、手紙を入れて梱包(こんぽう)するなどした方法は「埋葬と相いれないとは認められない」と判断し、1、2審の判決には重大な事実誤認があると結論付けた。
レーさんは20年11月に熊本県警に逮捕された。1審・熊本地裁判決(21年7月)は懲役8月、執行猶予3年、2審・福岡高裁判決(22年1月)は懲役3月、執行猶予2年といずれも有罪とした。
最高検の吉田誠治公判部長は「主張が認められなかったことは誠に遺憾だが、最高裁の判断を真摯(しんし)に受け止めたい」とコメントした。【遠山和宏】