中絶方法の選択肢が増えたことは歓迎する。一方で「薬を飲めばスッと妊娠が終わる」という安易で誤った認識が広がらないよう、正しい理解の周知に努めなければならない。心身への負担は相応に存在する。
メフィーゴパックの2剤目の「ミソプロストール」服用後、腹痛や出血が続くことがある。麻酔は利用しないため胎児や妊娠組織の体外排出に、意識がある状態で向き合うことになる。約1割は中絶に至らないケースも見込まれる。「魔法の薬」では決してない。
一方、手術では麻酔を使用し、短時間でほぼ確実に処置が完了する。もちろん、麻酔や手術の合併症にも一定のリスクはあり、そうした点に懸念がある方にとって経口薬は有益だ。ただ、それぞれのメリットとデメリットを正確に把握した上で判断しないと、「想像と違った」とトラウマを抱えるような事態になりかねない。
内服薬で簡単に中絶できるという誤解が広がり、避妊意識が低下しないかにも懸念がある。結果的に苦しむのは女性。経口薬が承認されても、望まない妊娠を防ぐ重要性は変わらない。
今回の動きを、包括的な性教育推進の好機と捉え、社会全体の理解が深まることを期待したい。