国連理事会の専門家や副委員長 日本に入管法改正案の見直し勧告

国会で審議中の入管法改正案について、国連人権理事会の専門家らが「(内容が)国際人権基準を満たしていない」として、21日までに共同書簡で日本政府に見直しを勧告した。18日付で公表された書簡によると、難民認定申請が3回以上の場合は強制送還を可能にしている点や、裁判所による収容の当否の審査を欠き、収容期間の上限を設けていないことなどを指摘している。【和田浩明】
共同書簡は、国連人権理事会の移民の人権に関する特別報告者や、宗教と信条の自由に関する特別報告者、恣意(しい)的拘禁作業部会の副委員長が署名している。特別報告者は、日本も参加している理事会が選び、独立した専門家として各種人権問題の調査や勧告を行っている。
書簡は、法案について「我々が同様の指摘をした2021年の法案(入管法改正案)と根本的に変わっておらず、国際人権基準を満たさない」と明言した。具体的には、難民認定申請が3回以上の場合に強制送還を可能にすることについて、危険な場所に難民を送還しない難民条約の原則に反していると指摘。送還対象者全員を収容する原則収容主義が維持され、収容を例外として自由を原則とする国際諸条約に沿っていないと記した。収容せずに送還手続きを進めるための新たな「監理措置」についても、保証金支払いや対象者の生活報告を求める内容が残っており、「差別的でプライバシーに反する」と批判。子どもの収容を禁止しないなど、子どもの権利にも反していると強調した。
法相「一方的な公表に抗議」
この書簡について、法案を審議している衆院法務委員会で21日、共産党の本村伸子議員に見解を問われた斎藤健法相は「国連や人権理事会からの指摘ではなく、法的拘束力はない。一方的な公表に抗議する。精査して事実誤認があれば丁寧に説明したい」と述べた。
今回の改正案は、強制送還を拒む「送還忌避者」を減らし、長期収容の問題を解消するのが狙いとされ、政府が3月に国会に提出した。共同書簡でも指摘している21年に国会で審議された改正案は、名古屋出入国在留管理局の施設で収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡した問題で、入管行政への批判が高まるなどして、廃案になった経緯がある。
書簡については21日、国会内で人権擁護団体や専門家らが記者会見した。認定NPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」の小川隆太郎事務局長は「法案は国際基準を満たしておらず、廃案にするしかない。国連と対話してより良い制度を作るべきだ」と強調した。国際人道法に詳しい藤田早苗・英エセックス大人権センターフェローも会見にオンラインで参加し「特別報告者は日本も参加している国連人権理事会から役割を与えられており、私人ではない。カナダも勧告を受けて差別的な国内法を廃止した。日本も助言を求めるべきだ」と述べた。