ロシア最高検察庁は21日、北方領土の元島民らで構成する「千島歯舞諸島居住者連盟」(千島連盟、本部・札幌市)を「好ましくない外国の組織」に認定した。北海道内の元島民や返還運動関係者らに困惑が広がっている。
歯舞群島・多楽島出身の角鹿(つのか)泰司・同連盟根室支部長(86)=根室市=は、日本の外交方針をまとめ、11日の閣議で報告された2023年版の外交青書を踏まえて「平和条約について『展望を述べる状況にない』などとする書きぶりやG7に歩調を合わせる日本に対してのけん制」と語る。また、今回の認定が「北方領土墓参にどう影響するのか気がかり。平均年齢87・5歳の元島民にとってはもう時間がない。『墓参をやらせてくれ』と強く求めることしかできない」と実現に向けた政府の取り組みに期待した。
連盟は「ロシア最高検察庁の認定は極めて一方的な対応。私どもとしては断じて受け入れることはできない」などとするコメントを発表した。脇紀美夫理事長(82)=羅臼町=は「墓参はこれまで以上に難しくなるかもしれない」と不安をもらす。
根室市の石垣雅敏市長は「連盟は、四島交流のほか、医療支援でも北方領土の現島民のために尽くしてきた団体で、今回の認定に憤りを感じる」としながらも、「一喜一憂するものではない。ロシアはこれまで『墓参は認める』としており、実現に向け政府はしっかり交渉してほしい」と求めた。
コンブ漁交渉妥結
一方、北方領土・貝殻島周辺のコンブ漁の操業条件を決める日露の民間交渉が21日に妥結し、解禁日の6月1日に例年通り出漁できることになった。22年はロシアのウクライナ侵攻による交渉の遅れで約3週間、出漁が遅れて満足な漁獲ができなかっただけに漁業者は安堵(あんど)した表情だ。道水産会によると、採取量は3081トン(21年比300トン減)で採取料は8254万円(同約600万円減)。操業隻数は204隻(16隻減)となっている。【本間浩昭】