リニア新幹線に「希望の光」か 静岡県知事の反対続くが…元側近の〝推進派〟が静岡市長に 技術立国の威信、開発加速させる中国

リニア中央新幹線の推進に一筋の光明が差し込んできた。静岡県の川勝平太知事が「大井川の流量減少」懸念などを理由に、県内工区(8・9キロ)の着工を認めず、2027年開業が絶望的となるなか、4月の静岡市長選で「リニア推進」を掲げた元副知事が圧勝したのだ。リニア新幹線は、最高時速500キロで、東京(品川)と名古屋の約300キロを約40分で結ぶ。「技術大国・日本」の象徴となるうえ、日本経済を活性化させて「インフラ輸出の目玉」としても期待されている。中国もリニア開発を加速させている。膠着(こうちゃく)状態が動くのか。
「県が行っていること、おそらく川勝知事が言っていることだが、『論理性が少し厳しい』という印象だ」「(懸案を)ほぼ解決できる案が出ている。『まだ反対するならおかしいですよね』と、皆さん思っている」
静岡市の難波喬司市長は4月26日、インターネットのニュース番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送 あさ8時!」にリモート出演し、こう語った。同月9日投開票の市長選で初当選し、13日に就任したばかりだ。
難波市長は元国交省技術総括審議官で、副知事として川勝県政を支え、リニア対策の中心人物だった。ただ、市長選では「一自治体の長が(国家的プロジェクトを)止めてはいけない」と訴え、得票率約58%で勝利した。静岡工区は南アルプストンネルの一部で、静岡市内にある。
リニア新幹線は、東京―名古屋を40分、45年予定の延長後は東京―大阪を67分で結ぶ、「夢の超特急」である。安倍晋三首相が現職時代、バラク・オバマ米大統領に、ニューヨークとワシントンを1時間で結べると売り込んだこともある。
巨額の費用が必要のため、国主導での推進も検討されたが、JR東海は国の財源依存による整備の遅れを予想し、自力建設を進めている。昨年死去したJR東海の葛西敬之名誉会長は生前、「リニアは日本の将来のために実現しなければいけない」「利用者の便益、サービスに飛躍をもたらすのが当社の国家的使命だ」などと語っていた。
静岡県は当初、トンネル工事の影響で湧き水が流出し、一帯を水源とする大井川の流量が減ると主張し、反対した。JR東海側は全量を川に戻すと説明し、国交省の有識者会議も「流量維持は可能」との中間報告をまとめた。
これに対し、川勝知事は「解決策が示されていない」といい、2021年の知事選でも「着工反対」を訴え、勝利した。
大井川の流量維持対策としては最近、上流の「田代ダム」の取水抑制案が有効策とされ、県や流域市町などが、水利権を持つ東京電力側とJR東海の協議入りを了承した。ところが、川勝知事は直後に「疑問点がある」と消極姿勢を見せたというのだ。