新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられる。これにより、これまでコロナ患者を受け入れてきた大病院や、発熱外来のある中小病院などだけでなく、一般病院や診療所もコロナ患者を受け入れることとなる。
感染者数に影響され続けた日々
5類移行にあわせて、コロナ患者受け入れ病院に求めていた死亡者数の報告も取りやめになり、季節性インフルエンザと同様、定点医療機関からの報告のみとなる。このため、感染拡大や、それに伴う死亡者数のリアルタイムで、かつ正確な把握が難しくなる。
振り返ると、コロナ禍の約3年間、患者の受療行動(診療を受けること)は、「波」に翻弄され続けてきた。
国内最大規模の医療ビッグデータを持つメディカル・データ・ビジョン(MDV)は、政府の初めての緊急事態宣言(2020年4月7日)を境にして、コロナ前(2019年2月~2020年3月)と、コロナ禍(2020年4月~2022年12月)に大きく分けて、すべての月のデータが揃っている341病院について、入院・外来の患者数(コロナ患者を除く)を分析した。
外来は規模で把握できるように、100床あたりの患者数とした。グレーで示したコロナ重症患者数の推移は、「波」のタイミングに合致する。
その結果、第1波以降、波が来るたびに患者の受診控えとみられる動きがあった。さらに入院(上の図)と外来(下の図)を比べると、外来の患者数は直近6カ月では戻ってきているものの、入院患者数は横ばいだった。
データを細かく分析すると、緊急性があまりない疾患の入院患者数の減少が続いている。入院全体の3割弱を占める消化器系の疾患では、直近6カ月の大腸ポリープの入院手術がコロナ前に比べて23.9%減少する一方、外来でできる日帰り手術が同22.7%増えていた。
分析を担当したMDVの宮田知明氏は、「波の回数を重ねるたびに入院患者数が少しずつ戻ってくると期待していたが、コロナ前ほどは戻っていない」と話す。そのうえで、「今後、コロナに関する(医療機関への)補助金がなくなるなか、収益に大きく影響する入院患者が戻ってこなければ、病院はますます厳しい運営を迫られるだろう」と、コメントしている。
それぞれの病院は、コロナ前の患者数には戻らないことを前提に、地域での役割を明確にしていかなくてはならない。では、現場にいる医療者はどんな思いでいるのだろうか。5類に移行する今、その思いを聞いた。
発熱外来受診者増で外来が滞る