「平和ボケ」の声も 銀座強盗事件、犯行動画が話題 専門家「遭遇したらまず安全確保を」

東京・銀座の高級腕時計専門店で8日夕、覆面をした男らが押し入った強盗事件は、犯行の様子が撮影された動画がSNS(会員制交流サイト)に投稿されて拡散し、大きな注目を集めた。動画には、男らの一連の行動のほか、店の前を平然と素通りする通行人や店のドアを押さえて男らを閉じ込めようとする通行人の様子も映っており、SNSでは「平和ボケ」などと指摘する声もあった。犯行から約1時間後に男らは確保され、専門家は投稿動画が早期逮捕につながった可能性を指摘する一方、事件に居合わせた場合は、現場から離れて安全を確保するよう呼び掛けている。
強盗事件が起きたのは8日午後6時15分ごろ。犯行後、都内のマンションに侵入した高校生を含む16~19歳の男4人が邸宅侵入などの疑いで逮捕されたが、周囲が明るく、繁華街で人通りの多い時間帯での犯行にSNSではさまざまな意見が飛び交った。
事件後間もなく、目撃者からツイッターで犯行の様子を伝える動画が公開され、警報音が鳴り響くなか、黒い服で白い仮面を被った3人の男がバールのようなものでショーケースをたたき割り、バッグにロレックスを詰め込む様子が映し出されていた。この様子を横目に平然と通り過ぎる通行人のほか、立ち止まって入り口の前にとどまり、扉を閉めて逃げようとする男らを閉じ込めようとする女性の姿もあった。男らは走って路肩に駐車された白いワゴン車に乗り込んで逃走した。白いワゴン車のナンバープレートもはっきりと映っていた。
SNSでは、現場に居合わせた人たちの反応について、「危機感の無さに驚く」「撮影かなにかと勘違いしそう」「第三者の行動を見てると、日本人ってやっぱり平和ボケしてるんだなと実感する」といった声が寄せられた。扉を閉めて犯人を店に閉じ込めようとした女性の行動については、「勇気がある」などと称賛の声が相次ぐ一方、「相手が逆上して頭でも殴られたら命が危ない」と心配する声も多かった。
日中の強盗、今後も警戒必要
元大阪府警刑事で、筑波学院大学客員教授の中島正純さんは、男らによる高級時計の強奪について、「迷わず手際よく強奪する、警察用語でいう『ヒットエンドラン』で、下見やシミュレーションを事前にしているのではないか」と推察。逃走については、「計画性がなく、雑」だとし、SNSなどを通じて集められ、指示役に従って犯行を行う「闇バイト」の可能性が高いとみている。
通行人が行き交うなか、堂々と強盗が行われたことについて、「夜はシャッターを破る手間がかかり、日中にやった方が手っ取り早い」と指摘。効率性の面から、日中の開店時に高級な商品をまとめて狙う強盗は今後も警戒が必要だとしている。
通行人が犯人を閉じ込めようとした行為や動画の撮影については、「犯人に凶器で刺されたり、バールで殴られたりする可能性もあり、拳銃を持っていた場合は周辺の人も被害に遭う可能性もある」と指摘。事件に遭遇した場合は、距離を取って安全を確保をした上で110番通報して警察に対応を任せることが重要だとし、「常に危機意識を持ち、身を守ることを考えてほしい」と訴えた。(本江希望)