東京都江戸川区の住宅で今年2月、住人の60歳代男性が刃物で殺害される事件があり、警視庁は10日、事件に関与した疑いが強まったとして、江戸川区立中学校教諭の尾本幸祐容疑者(36)(江東区大島)を殺人容疑で逮捕した。
教諭が殺人事件の容疑者として逮捕されるという異例の事態に、学校関係者らの間には大きな動揺が広がった。生徒や保護者からは「信じられない」と戸惑いの声が相次いだ。
尾本容疑者が勤務していた松江第五中学校の荒巻淳校長は10日午後、記者会見を開き、「全く予想しておらず言葉にならない」と驚きを隠さなかった。
荒巻校長によると、尾本容疑者の勤務態度は良好で、問題行動はなかった。事件当日の2月24日は午後から休暇を取っていた。逮捕前日の今月9日まで普段通り勤務しており、荒巻校長は「事実だとすれば、保護者や生徒におわびしたい」と述べた。
尾本容疑者は江東区出身で、日本大学を卒業後、2010年度に東京都の教員試験で採用された。伊豆諸島・新島村の中学校などを経て22年4月に現在の松江五中に異動し、特別支援学級を担当していた。
新島の中学校では野球部を指導していたといい、当時、次男が野球部員だった男性(55)は「生徒思いで、熱心な先生だった。到底信じられない」と話した。松江五中でも生徒と体を動かすことが多かったといい、同校2年の女子生徒(13)は「よく生徒と一緒に校庭を走っていて、『頑張って』と声を掛けていた。こんなことになるなんて……」と語った。
尾本容疑者の自宅近くの女性(66)は「3人のお子さんがいる子煩悩なお父さんで、玄関先で子どもと一緒に遊ぶ姿をよく見かけていた。最近も特に変わった様子はなかったのに」と話した。