子どもに罰を与えるような不適切な保育を巡り、こども家庭庁は12日、全国の自治体と施設を対象にした初の実態調査の結果を公表した。昨年4~12月の間に、市区町村が通報などを受けて確認した保育所での不適切保育は914件で、このうち、たたくなどの虐待と確認されたのは90件に上った。
調査は、同12月に静岡県裾野市の認可保育所で、園児への暴行が発覚するなど不適切保育が社会的な問題となったことを受け、全国1741自治体を対象に実施し、1530自治体が回答した。全国の2万2720の保育所を調査した。
保育所での不適切保育の内訳(複数回答)は、「子どもの人格を尊重しない関わり」が384件で最多となり、「物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ」337件▽「罰を与える・乱暴な関わり」276件▽「育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり」123件――などが続いた。虐待(同)は、心理的虐待42件▽身体的虐待36件▽性的虐待20件▽ネグレクト4件――だった。
都道府県別では、東京都が173件▽岐阜79件▽神奈川県が65件▽愛知県が60件――だった。虐待は、東京都が24件▽静岡県19件▽愛知県が10件――だった。保育所を除く、認可外保育施設や、認定こども園などの不適切保育の件数は計402件だった。
現行の制度では、保育施設で虐待が発生しても、職員による自治体への通報義務がない。このため、同庁は児童福祉法を改正して、通報義務を課すことを検討する。
定義が曖昧だった影響もあり、施設に対する調査では回答にばらつきが生じた。件数は1万9603件だったが、0件と回答したのが全体の73%に上り、31件以上あると回答した施設(0・4%)の件数だけで全体の約4割(7427件)を占めた。同庁は新たに作成したガイドラインで、不適切保育を「虐待等と疑われる事案」と位置付け、事案が発生した場合には自治体に相談するように促し、自治体は保育施設に指導や立ち入り調査などを適宜行う方針だ。【小鍜冶孝志】