核軍縮と核廃絶の議論、今こそ 被爆地でのG7 抑止論の次の一歩を

主要7カ国首脳会議(G7サミット)が19~21日、広島市で開かれる。日本を拠点にそれぞれの分野で活躍する人たちに、各国の指導者に求めることを聞いた。【聞き手・岩本一希】
「ハチドリ舎」店主・安彦恵里香さん
「まじめなことを話しても、引かれない場所をつくりたい。社会課題について気軽に語り合いたい」との思いから、2017年、広島市中区の平和記念公園の近くに「Social Book Cafe ハチドリ舎」をオープンさせました。
社会課題には具体的なアクションを考え、行動することが大切だと思います。でも、そういう話をすると距離を置かれたり、「面倒くさい」と言われたりすることがあります。おかしいことをおかしいと言う人や、言える場所がないと、社会は後退してしまいます。
ここではLGBTQなど性的少数者の居場所づくりのほか、ジェンダー、政治参加、平和などのカテゴリーで話し合っています。月3回、「6」のつく日は、被爆者の話を聞き、交流するイベントを開いています。
平和については他県より広島から発信する方が声になりやすいですが、必ずしも広島出身である必要はありません。どこにいても核問題は全人類の課題だからです。
今、核を巡る世界の議論は「核抑止」と「核廃絶」の対立になっています。核抑止論は、将来にわたって核兵器の存在におびえ続けることを約束するようなもの。未来について語るなら、核保有国と非保有国の垣根を越えて本気で核廃絶を考えなくてはなりません。
その点で、G7各国からはどんな世界にしたいのかというビジョンが見えません。核保有国は、ロシアなどの脅威を理由に核兵器を持ち続ける言い訳ばかりをしています。G7にはロシアも中国も入っていないので、より対立を深めるような集まりにならないかと思います。
サミットでは核抑止論に終始せず、次の一歩を進める必要があります。核の脅威がロシアによってもたらされた今こそ、核軍縮と核廃絶の議論をしなければなりません。ロシアや中国も含めた核軍縮の推進を提言してほしいです。
それが期待できないなら、広島でサミットを開催しないでほしい。核兵器を持つ国の首脳が広島に足を踏み入れる。その居心地の悪さを感じてもらいたいです。核兵器の恐ろしさを心から感じ、なくさなければならないという考えに至らなければ、広島に来る意味はないでしょう。
日本は核兵器が引き起こす惨状について、最もリアリティーを持って発信できる国です。岸田文雄首相は「『核兵器のない世界』の実現」をライフワークに掲げるのなら、それに見合う行動を示してもらいたい。最低でも核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を表明すべきです。
あびこ・えりか
茨城県出身。NGO「ピースボート」への参加を機に広島に移住した。広島市中区のカフェ「Social Book Cafe ハチドリ舎」店主。若者らでつくる「カクワカ広島」(核政策を知りたい広島若者有権者の会)発起人。44歳。