生活が苦しくとも誰にも相談できない―。そんな孤独を抱えながら貧困に苦しむ中高年が増えている。特に同居家族がいない独居中高年の場合、身近に助けを求められる人すらいなく、苦しい状況を一人で抱えたまま心を病んでしまう人もいる。中高年を襲う孤独と貧困の実情に迫った。 ◆「詐欺犯とのやりとりすら嬉しかった」孤独な貧困中年がたどり着いた闇バイト 現在、社会問題になっている闇バイト。SNSを通じて特殊詐欺などの犯罪に加担してしまう人が後を絶たない。 闇バイトに手を染める人は学生など若者が多いイメージがある。しかし、実は生活苦から闇バイトに応募する中高年も少なくない。東北地方在住の滝川大樹さん(仮名・54歳)もその一人だ。 ’20年に詐欺事件で逮捕された滝川さんは、2年4月の実刑判決を受け、昨年、刑期を終えて出所した。 「僕はツイッターを通じて闇バイトに応募し、警察官のふりをして高齢女性から現金を騙し取りました。いわゆる“受け子”です。駅のトイレに駆け込んで、震える手でお金を必死に数えたところ、全部で106万円。そこから10万円を抜き、残りを東京駅まで運んでコインロッカーに入れました。もちろん、犯罪だという自覚はありました」 自分の罪をそう振り返る滝川さん。この事実だけを聞けば、カネに目がくらんだ中年が犯罪に走っただけのように思えるだろう。ただ、彼が犯行に及ぶまでの経緯を知ると、また違った一面が見えてくる。 ◆両親の離婚、義父からの暴力…仕事ではうつ病に 滝川さんの育った家庭環境は少々複雑だ。18歳の頃に両親が離婚し、実父の戸籍に入りながらも親戚の家に妹2人と預けられて暮らしてきた。 「当初は良くしてもらっていたのですが、徐々に親戚との仲も悪くなり、夕食時に僕だけ料理が出ない日もありました。それで親戚宅には居づらくなり、実母を頼って同居したのですが、今度は再婚した義父から暴力を受けた」 高校卒業後はお金の問題から進学せず、アルバイト生活。しかし、どの職場でも長くは続かなかった。 「学生の頃から周囲に合わせるのが苦手なタイプで、バイト先でも人間関係がうまくいきませんでした。ただ、30歳の頃にようやく広告会社で正社員になれたんです。チラシデザインの仕事に就き必死に働いていたのですが、月100時間超の残業がキツくて、今度はうつ病になってしまった。最後は実質クビのような形でその仕事をやめました」 ◆東日本大震災で住居が全壊、生活保護を受給するようになったが…