「いきすぎたネット炎上」を深刻化させているのはマスコミ?“火種”となる情報を届けている現状

’22年に発生した炎上事件は1570件(『デジタル・クライシス白書2023』より)。一日平均4.3件。今日もどこかで誰かが燃えている。特に、回転寿司チェーン「スシロー」での迷惑動画がSNSで拡散されたことが記憶に新しいが、犯人の個人情報を晒し、実家や所属先にまで社会的損害を与える“制裁”は、いきすぎた正義ではなかろうか。更生の余地すら与えない現代デジタル社会の闇、あなたの正義感は果たして正しいのか、今、試される――。 ◆炎上を最も巨大かつ深刻なものにするのは… 炎上はSNSを筆頭としたネット空間でのみ発生していると思われがちだ。だが、炎上のメカニズムを研究する経済学者の山口真一氏によると「最も炎上を巨大かつ深刻なものにするのは、ネットメディアでもまとめサイトでもなく、テレビや新聞・雑誌などのマスメディア」だという。 「帝京大学准教授の吉野ヒロ子氏による炎上認知経路に関する分析の結果、炎上を知る経緯として最も多かったのはバラエティ番組を筆頭としたマスメディア(58.8%)でした。 一方、Twitterは23.2%にとどまっています。つまり、炎上とはネット上の現象にもかかわらず、実際にはマスメディアが最も広く拡散させて『正義の刃を振るう人』に“火種”となる情報を届けていると言えます」 ◆各局のワイドショーで繰り返し流される動画 先日のスシローでの迷惑動画事件の際も、件の動画が各局のワイドショーで繰り返し流されたことを覚えている人も多いだろう。こうしてテレビで騒動を知り、「けしからん!」と感じた人が正義感に駆られてネットを開き、炎上に参加する……。 この流れこそが、炎上をもっとも巨大化させ、“正義の暴走”に拍車をかけている。 ◆批判を煽るビジネスモデルは変革すべき 「人々の負の感情を煽って視聴率や部数を伸ばす手法は、メディアが昔からやってきたことです。ですが、今は人々が自由かつ容易に誰かを攻撃できる時代。 だからこそこうした批判を煽るビジネスモデルを変革しなければいけない時期に来ているのではないでしょうか」(山口氏) 我々も自戒の念を持って、今後の誌面作りに生かしたい。 【経済学者・山口真一氏】 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。専門は計量経済学。著書に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』 取材・文/週刊SPA!編集部 ―[[炎上させすぎ(偽)正義]社会の闇]―