G7サミット主会場の宇品島は厳戒態勢、橋でつながる住民1500人「今のうちに買い出しを」

先進7か国首脳会議(G7サミット)の主会場となるグランドプリンスホテル広島は、広島市中心部から南に約5キロ離れた 宇品 (うじな)島にある。住民約1500人が暮らす島は15日から立ち入り規制が始まり、開幕に向けて緊張感が高まっている。(広島総局・山下佳穂、写真も)
遊歩道沿いにフェンス、監視カメラも

広島湾に浮かぶ周囲約3キロの小さな島には、保育園や小学校、病院もある。ひときわ目を引くのが、島の南端近くにそびえる三角柱の形をしたグランドプリンスホテル広島だ。1994年に開業した地上23階建てで、瀬戸内海を一望できる。
10日、本土側から橋を渡って島内に入ると、早速、多くの警察官の姿が目に入った。海岸沿いを歩いていくと、愛知県警の警察官に「報道の方ですか。社名と名前を教えてください」と声をかけられ、車のナンバーや取材予定まで聞かれた。島民ではなさそうな人に声をかけているという。
島西側の半分以上を公園が占め、原生林の面影を残す木々が茂る。普段は住民たちの憩いの場だが、道路や遊歩道に沿って高さ2メートルを超えるフェンスが設置され、その上には監視カメラも。島の隅々まで警戒が行き届いていると感じた。
さらに南に向かうと、道路沿いに警察の大型車両がホテルの敷地を取り囲むように止まっており、一層、物々しい雰囲気が漂う。巡回中の警察官に尋ねると、ホテルへ向かう道は従業員しか通れないという。
多数の警察官、住民に緊張感と安心感

漁師の男性(72)は「朝夕は犬の散歩に出るので、警察官とも顔を合わせる。みなさん、気さくで接しやすいですよ」と笑みを浮かべた。大勢の警察官の存在が、緊張感にも安心感にもつながっているようだ。
一方、住民の生活には影響が出る。橋の近くに住む主婦(75)は「移動や買い物もしにくくなると思うので、今のうちに買い出しをしておかないと」と、少し気ぜわしそうに話した。
今回のサミットでは、海上の警備も重要視されている。海岸に足を運ぶと、海上保安庁の大型巡視船が係留され、香川県警、岡山県警、大阪府警などの警備艇も警戒にあたっていた。ホテルに近い海域には、「航行自粛区域」を示す黄色のブイが浮かんでいる。
普段は静かな島の景色は一変したが、全国から集まった警察官や海上保安官が日々、島民に「こんにちは」と声をかけ、通行規制などの質問にも丁寧に答えている。まもなく、G7各国の首脳が顔をそろえ、世界中から視線が注がれる。このまま安全なサミットに導いてほしい。