社会的な知識が乏しい若者らが、投資や副業名目に「詐欺」的な被害に遭うケースが目立っている。副業トラブルの被害に遭った千葉県の男性会社員(29)が、産経新聞の取材に応じた。
勧誘の女「後悔させない」
男性は昨年6月上旬、交際していた女性との婚約を踏まえ、資産を増やそうと副業を探し始めたという。そしてツイッター上で《コンテンツ販売代行》の出資者を募っていた女の投稿を目にし連絡したとする。
女は男性に代わってコンテンツ販売を行い最終的に1200万円の売り上げが出ると説明。「(売り上げの)全額を振り込む」として元手の9万円を求めた。
どんなものを、どう販売するかといった具体的な話は、女からは一切なかったが、「残りの枠はわずか」「後悔させない」などとたたみかけられ、9万円を指定された銀行口座に振り込んだ。契約書もなかった。
要求はエスカレート
女は、さらに《臨時代行費用》《画像製作費》などの名目で振り込みを次々要求。男性は個人年金の貸付制度を利用するなどし総額100万円を工面し、入金した。貸し付け上限額まで利用したため、次は消費者金融からの借り入れも求められたが断った。一方、男性は販売代行の進捗(しんちょく)を尋ねたが「基盤づくりに専念している」などとするだけで、具体的な説明はなかった。
7月下旬に入ると、要求はエスカレートした。「生活が苦しい」「母ががんになった」などと出資と関係ない費用まで要求。心配した男性は友人を巻き込み、さらに約200万円を渡した。だが、9月に入ると女と連絡が取れなくなり、詐欺だと気付いたという。
弁護士や警察に被害を相談しているが、現金が戻るめどはたっていない。男性は「知識がなく、自分にも甘いところがあったが、相手は金を手に入りさえすれば、どうでもいいと思っているのだろう」と憤った。
「副業解禁に便乗か」
被害の実態に詳しいワンピース法律事務所の杉山雅浩弁護士の話 「副業は闇バイトなどと比べ、手を出す心理的ハードルが低い。また、公務員や大企業の副業解禁の流れもあり、悪質な業者が便乗する契機になった可能性もある。SNSと親和性の高い若者らが、自身の給与と照らし合わせ、手を出しているとみられる。だが、副業を始めるのに、なぜ、お金を払わなければならないのかという疑問を持ってほしい」