広がれ「ヘアドネーション」の輪 髪を失った小児がんの子らにかつらを

一般的に15歳未満で発症し、年間約2000人が発症すると推定される小児がん。約8割が治癒するが、強い抗がん剤の影響で、髪が抜ける子供が多い。だが、子供用のかつらは、あまり市場に出回らず、高額なものも多い。子供たちのために髪の毛を寄付し、かつらを提供する「ヘアドネーション」の機運が高まっている。【田畠広景】
「38、39度の熱が2カ月引かなかった。血液検査をしてもらったら、がんとわかった」。大分市の主婦、川口倫恵さん(42)は、長女の釉瑞(ゆうみ)さん(6)が、生後わずか8カ月で白血病と診断された当時を振り返った。
待望の女の子だったのに、すぐに始まった入院生活。「抗がん剤治療で、まつ毛まで抜けた。親としてすごくショックだった」
長女の闘病を支えて病室に行くと、釉瑞さんと同じように小児がんとなり、髪の毛を失った子供たちの姿を目の当たりにした。思春期の少女もいた。「子供用のかつらがない」。母親同士の会話で、そんな悩みを聞いた。子供用のかつらは、数十万円することもあるという。
娘の病気の完治への願かけと「誰かの役に立ちたい、恩を返したい」という思いから、川口さんは、ヘアドネーションすることを決めた。
川口さんは肩に届かないほどのショートヘアを、2013年秋から伸ばし始めた。長い髪の洗髪や乾燥に苦労しながら、伸ばし続けて約5年。今年2月に娘の完治が告げられ、大分市内の美容室で髪を切り、子供のためのかつら作りに関わることに決めた。

約50センチの髪の毛をカットした川口さんは、寄付された髪の毛でウイッグを作るNPO法人「ジャパンヘアドネーション&チャリティー」に切った髪を送って、かつらをつくってもらった。
11年目を迎えた同団体は、約400個の子供用のかつらを作製し、無償で提供している。美容師でもある同団体の渡辺貴一代表理事(48)は「まだまだ子供用のかつらが必要な状況が、世間で知られていない。髪の毛を失う子供の存在を、リアルに感じてもらいたい」と話す。
川口さんは「私の友人も髪の毛を寄付してくれると言っている。子供のかつらのために、髪の毛を寄付しようという人の輪が広がってほしい」と話す。