外国人の収容・送還ルールを見直す改正入管難民法が成立したことについて、名古屋出入国在留管理局の収容施設で2021年3月に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=の遺族は9日、「改正法で母国に帰されてしまう人が出る」と懸念を示した。
ウィシュマさんの妹ワヨミさん(30)とポールニマさん(28)はこの日、黒い服装で、遺影を手に参院本会議を傍聴した。改正入管法に関する討論は30分以上続き、採決では野党議員が「反対」と声を張り上げる中、与党などの賛成多数で可決。2人は終始厳しい表情で経過を見詰めていた。
成立後、国会前で取材に応じたワヨミさんは「改正法は(難民申請者を)迫害の恐れがある母国に送り返してしまう恐れがある」と指摘。大阪入管の常勤医師が酒に酔った状態で収容者を診察した疑惑に触れ、「この問題を無視して強行採決したことは、人の命を軽視している姿勢が表れている」と批判した。
改正法は、難民申請中は強制送還を停止する現行規定に例外を設け、3回目以降の申請者は相当の理由を示さなければ送還できるようにした。遺族代理人の指宿昭一弁護士は、改正の根拠の一つとなった「難民をほとんど見つけることができない」とした過去の国会での参考人発言の信ぴょう性が今国会で揺らいだと指摘。「立法(の前提となる)事実が崩れているのに採決され、異常な事態。難民の命を危険にさらす」と抗議した。
国会前には数十人が集まり、「入管法改悪反対」と書かれた横断幕やプラカードを掲げるなどして廃案を訴えた。
ミャンマーで迫害されているイスラム系少数民族ロヒンギャのミョーチョーチョーさん(37)=東京都=は、3回目の難民申請が2月に棄却されたという。8月まで在留特別許可が出たが、「軍事政権への反対活動もしており、送還されたら殺される」と不安を口にした。
[時事通信社]