理事長ら先にアルコール使い点火 福岡バーベキュー4人死傷事故

福岡県柳川市のハリウッドワールド美容専門学校でバーベキュー中に学生4人の衣服などに火が燃え移り1年の男子学生(18)が死亡した事故で、男性教員が火力を強めようと調理器具に手指消毒用アルコールを加え火が燃え広がる前に、理事長らがアルコールを使って点火していたことが9日、学校への取材で判明した。組織全体で危機意識が欠如していた可能性もあり、学校は弁護士らによる第三者委員会を6月中旬をめどに設置し経緯や原因を調べる。
県警柳川署は業務上過失致死傷容疑で調べており、男子学生の死因は敗血症性ショックだった。他の10~20代の3人も病院に搬送され命に別条はないという。
学校によると、事故があった5月24日、金属製の箱形の調理器具12台に炭を入れて火をつける際、教職員が着火剤や新聞紙にアルコールを染み込ませ、理事長や副理事長らが着火用ライターで点火した。約10分後、調理器具の火勢を強めようと男性教員が炭に直接アルコールを加え、一気に火が燃え上がった。
アルコールは縦約30センチ、横約10センチ、高さ約20センチのポリタンクのような容器に入っており、男性教員は液体の状態のアルコールを炭に注いだとみられる。事前打ち合わせでは、安全面を考慮して容器は着火後に職員室に撤去する予定だったが、会場に残したままだった。
バーベキューは懇親のため全専門学校生(約470人)らを対象に実施され、学校は学生4人が搬送された後もバーベキューを続けた。【降旗英峰】
あり得ない使い方
消毒用アルコールをバーベキューの火おこしや火の勢いを強める目的で使うことはどれほど危険なのか。総務省消防庁危険物保安室の担当者は「あり得ない使い方だ」と強調する。
同室によると、アルコールは蒸発しやすく、可燃性蒸気が発生するため、火に近づけただけで急激かつ爆発的に燃え上がる。可燃性蒸気は目に見えず、燃やそうとした対象だけでなく、周囲の人などに引火する危険もある。担当者は「アルコールは火に近づけてはならず、火おこしに使うなんてもっての外だ」と話す。
過去にも同様の事故はあった。消費者庁によると、2022年5月に起きた事故では、バーベキューでガスバーナーによる着火ができなかったため液体のエタノール(アルコールの一種)を火に向けてまいたところ、40代の人に引火し全身をやけどして入院した。
バーベキューでは着火剤による事故も後を絶たない。独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」によると、1996年以降、全国で少なくとも11件の着火剤による事故が起きた。子どもがやけどしたケースもあり、着火剤のつぎ足しが原因となったものが目立つ。担当者は「早く火をおこしたいのは分かるが、つぎ足しは危険だ」と強調し、「新型コロナで控えられていたさまざまなイベントが復活し、バーベキューの機会も増える。取扱説明書をよく読み、改めて注意してほしい」と呼びかける。【平川昌範】