実録・人間劇場 新宿・歌舞伎町編(14) 客引きだけではなくクスリも売る不良外国人 コカイン、大麻、覚醒剤も 上野、原宿では偽物のブランド品を売りつけ

「歌舞伎町や六本木の路上に立っている黒人たちは客引きだけではなく、違法薬物の売買も行っている」
これは華街に出入りする人々の間では、もはや周知の事実となっているが、数年前まで歌舞伎町の路上に立っていたナイジェリア人のイブラヒム(現在は関東某所でバーを経営)も、やはり事実であると教えてくれた。
「黒人たちは客引きだけじゃなくてクスリを売ることでも稼いでるよ。でも俺たちだけじゃなくて日本人もやってるじゃん」
華街には「黒人=コカイン」という1つの固定観念がある。確かに黒人はコカインを中心に取り扱っているというが、それは日本人の思い込みが作り上げたことだともイブラヒムは言う。
「コカインだけじゃなくて大麻もあるし、覚醒剤も売ってるよ。でも日本人には黒人=コカインというイメージがあるみたいで、コカインばかり買いに来るね。だから黒人はコカインをたくさん仕入れるようになるよね」
違法薬物の種類を問わずではあるが、コカインの所持・使用で逮捕された場合、警察には販売者の存在を聞かれるだろう。その際、「歌舞伎町の黒人から買ったけど顔は忘れた」という供述は、もはや慣用句のように定着している。
イブラヒムによれば、違法薬物の売買に手を染める黒人たちの一部は、上野や原宿から流れてくることもあるという。
その上野や原宿を拠点とする黒人は「ブラザー、服を買わないか?」と声をかけては服を売りつける。だが、商品は偽物であることが多い。なかには買うまで店から出さないという軟禁・恐喝まがいの行為をする者もいる。
この偽物の服を売る黒人たちのルートは中国にある。過去、黒人たちと同じように偽物の衣料品を仕入れ、日本で販売していたという都内で不動産業を営む男性が話す。
「私は中国の広州でいつも偽物の衣料品を仕入れていました。いろんなブランドの偽物を製造する巨大な工場があり、シンジケートになっているんです。そこには日本からやってきた黒人たちもたくさんいて、やはり上野や原宿で売るそうです」
タイ、ベトナム、カンボジアなど東南アジア各国では、夜になるとどこからともなく商人たちが現れ、夜市を形成する。そこでは日本で買えば2万~3万円はする人気ブランドの商品が、2000円ほどで売られている。
旅行者に特に人気なのは、「THE NORTH FACE」のリュックサックや防寒着だ。よく見れば偽物であることはわかるものの、正直言うと機能性に関してはそこまで劣らない。貧乏旅行を続けるバックパッカーはこぞって愛用している現実がある。
これらの商品も、もちろん広州から仕入れた偽物である。
■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。新刊「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)が話題。