実録・人間劇場 新宿・歌舞伎町編(15) 黒人と日本人も時には手を結ぶ「ぼったくり事情」 結局はカネ…打算的な人間関係

「黒人のキャッチが連れて行く店は100%ぼったくり」
歌舞伎町(東京都新宿区)の路上に立つ日本人のキャッチは口をそろえて言う。自分と違うグループを敬遠しているだけであって、すべての店がそうであるはずなどないが、確かに黒人が連れて行く店はぼったくりの被害が多い。
現在、歌舞伎町は外国人旅行者であふれ返っている。ゴールデン街にいたっては、もはや日本人の方が少ない勢いだ。ウーロン茶一杯で閉店まで居座る貧乏バックパッカーもいるというが、2019年ラグビーワールドカップ以来のバブルに沸いている。
区役所通りのガードレールに腰をかけて通りを眺めていると、目の前の雑居ビルのエレベーターから黒人と白人の男がもみくちゃになって飛び出してきた。
「ファック!」
白人の男がまとわりついてくる黒人を振り払い、罵声を浴びせている。連れて行かれたバーでぼったくられたのだろう。最近、そんな光景を見る機会がかなり増えた。
しかし、この黒人たちが連れて行く「インターナショナルクラブ」という場所は、たとえそこでぼったくられた客がいたとしても、ほかの客も必ずぼったくられるというわけではない。過去に歌舞伎町でキャッチをしていたイブラヒムというナイジェリア人の男が話す。
「俺が普段遊びに行くインターナショナルクラブがあなた(筆者)にぼったくりをしないとは約束できない。でも〝俺の友だち〟という紹介で店に入れば、ぼったくりはされないよ。その店が〝ぼったくり店〟というわけではなく、キャッチと客、キャッチと店の関係性で決まることなんだよ」
日本人のキャッチがインターナショナルクラブを「ぼったくりの温床」と評していることもイブラヒムは知っている。
「確かにインターナショナルクラブでぼったくりは多い。でも日本人も当たり前のようにやっていることでしょ。だってここは歌舞伎町じゃん。黒人を悪いと決めつけた方が、日本人が有利になるだけでしょ」
しかし、歌舞伎町を歩いていると、日本人のキャッチと黒人のキャッチが談笑している姿をよく目にする。どちらかが街に「出勤」してきたときは、グータッチで迎え入れるほど両者の距離は近い。
「かぶっていることもあるけど、黒人が連れて行ける店と日本人が連れて行ける店は違う。日本人が外国人の客を捕まえたときは黒人に引き渡すこともあるし、その逆もあるよ。その場合、店からのキックバックを分けることだってある」
状況によっては相手を落として自分を上げることもあれば、手を組んで協力することもある。両者の人間関係は非常に打算的だ。
■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。新刊「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)が話題。