北海道のヒグマ目撃件数が過去最多ペースで増加中だ。5月末までの段階で700件以上が報告され、先月には道北の朱鞠内湖で釣り客がヒグマの食害に遭って死亡する事件が発生。今月17日には札幌市西区で電気柵のしてあった幼稚園の敷地にヒグマが侵入しているのが確認された。北海道は今年度3例目の「ヒグマ注意報」を発令した。
ヒグマのプロファイリングを得意とする北海道猟友会砂川支部長の池上治男氏は、こう警鐘を鳴らす。「ヒグマの数は尋常じゃなく増え、都市部も田舎も関係なく北海道全域が危険地帯。砂川では夜に住宅街を散歩中、暗がりで人だと思って声を掛けたらヒグマだったというウソみたいな話も起きている。郊外の山とつながる緑地帯が多い札幌市でも、中心地にある大通公園に突然ヒグマが現れても不思議じゃない」
歓楽街すすきのと直結する大通公園にヒグマ出没とはとっぴな話に聞こえるが、2021年6月には絶対出るはずがないと思われていた札幌市東区の住宅街にヒグマが出没し、住民4人が襲われた。そもそも札幌市は豊平川や創成川など、山とつながる移動に適した緑地帯は多く、人間さえ恐れなければエサも豊富。山を追い出された個体が迷い込みやすい条件がそろっている。
そのヒグマ総数も1990年に「春グマ駆除」をやめてから右肩上がりで増加し、当初5000頭と言われたヒグマは現在1万2000頭近くにまで倍増。結果、山にヒグマが飽和し、追い出されて人里近くへと進出する個体が増えた。今年から頭数管理のため「春期管理捕獲」を始めたが、“熊撃ち”と呼ばれる熟練ハンターの減少で、今年はわずか20頭しか駆除できなかったという。
そんななか7月から北海道は夏の観光シーズンを迎えるが、「観光客に北海道を楽しんでもらいたいが、そのためにはヒグマの危険性を周知すべき」(池上氏)。
「北海道全域に“ヒグマ非常事態宣言”を出して、もっと大々的にヒグマの危険性を知らせるべき。知床では観光客がヒグマを見つけて車から降りたり、果てはツーショット写真を撮ろうとするなど危険な状況が繰り返されている。たとえ車に乗っていても、軽自動車くらいなら簡単に横転させられるし、本気で襲ってきたらガラスを破られる可能性があることを理解してほしい」。北海道を訪れる一人ひとりがヒグマへの危険性を理解した上で行動することが必要だ。