2021年8月に東京都の高校3年生の女子生徒(当時18歳)を誘拐して殺害したとして、殺人などの罪に問われた群馬県渋川市に住む無職の夫妻の裁判員裁判で、東京地裁は20日、夫の小森章平被告(29)を懲役23年(求刑・懲役25年)、妻の和美被告(30)を懲役18年(求刑・懲役22年)とする実刑判決を言い渡した。
染谷武宣裁判長は、章平被告が事件を主導したと認め「妻がいるにもかかわらず身勝手極まりない。被害者が味わった恐怖は想像を絶する」と述べた。
判決によると、両被告は共謀してネット交流サービス(SNS)を使って女子生徒を呼び出し、21年8月28日に車で渋川市の自宅に誘拐。同30日、山梨県早川町の物置小屋で首を絞め、ナイフで背中を複数回刺して殺害した。
判決は、女子生徒とSNSで性的なやりとりをする関係だった章平被告が、和美被告との結婚をきっかけに女子生徒から距離を置かれるようになったと指摘。女子生徒への執着心から誘拐したものの、警察に見つかるかもしれないという焦りなどから殺害に及んだとした。女子生徒に嫉妬していた和美被告は、章平被告に従う形で事件に関与したと認定した。
弁護側は、章平被告は人の気持ちをくみ取るのが苦手な特性があり、和美被告も世話をしてくれる人に過度に依存する精神障害と診断されていたと主張したが、判決はいずれも量刑に大きく影響しないとした。
被害者参加制度を利用して公判に参加し、両被告に極刑を求めていた遺族は、閉廷が告げられると「ふざけるな」と怒号を上げた。記者会見した代理人弁護士は「卑劣な殺人に対して量刑が軽すぎ、被害者の命が軽く扱われているという思いが遺族にはある」と代弁した。【斎藤文太郎】