上場企業「三栄建築設計」に異例の暴力団排除条例勧告 東京都公安委

東証プライム上場の不動産会社「三栄建築設計」(東京都杉並区)の前社長の男性が指定暴力団住吉会系の男性幹部に金銭を供与したとして、都公安委員会は20日、同社に対し、都暴力団排除条例に基づき利益供与をしないよう勧告した。関係者への取材で判明した。上場企業に暴排条例を適用して勧告するのは全国でも異例という。
関係者によると、20日午前、都公安委員会から同社に対して勧告書が交付されたという。同社は取締役会を開いて今後の対応を協議するとみられる。
三栄建築設計を巡っては、前社長が2021年3月、子会社発注の建物解体工事を暴力団の男性幹部が指定した企業に受注させたとされる。その際に工事費用を通常よりも約200万円水増しして支払い、水増し分を男性幹部に供与したとみられている。
この男性幹部は、工事を受注した東京都世田谷区の建築会社の元社員に「工事を早くしろよ。ぶっ殺してそこの庭に穴掘って埋めちまうぞ」などと脅迫したとして暴力行為等処罰法違反容疑で警視庁に逮捕された。
捜査関係者によると、前社長と男性幹部は以前からの知人で、飲食をともにする関係だった。前社長は警視庁の任意聴取に対し、「暴力団員という認識はなかった」などと説明していたという。警視庁は近く、工事費水増しにより三栄建築設計に損害を与えたとする特別背任容疑で前社長を書類送検する方針。
三栄建築設計は分譲住宅や注文住宅の生産・販売を主に手がける不動産会社。1993年に前社長が創業したが、前社長は22年11月に「一身上の都合」として社長を辞任していた。