難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた元医師の山本直樹被告(46)の公判が21日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。女性の主治医だった男性医師は証人尋問で、事件前日も女性の体調は安定しており、異常はなかったと証言した。
この医師は2012年からALS患者の林優里さん(当時51歳)の主治医を務め、自宅を毎週訪問して診察していた。林さんの症状は進行していたが、事件前日の19年11月29日も「命に関わる変化は全くなかった」と述べた。
翌30日、林さんを介護していたヘルパーから連絡を受け、林さん宅に駆け付けると「呼吸が止まっていて脈も取れず、心肺停止状態だった」と急変ぶりを証言。事件後に遺体から検出された睡眠薬について「呼吸抑制の作用があり、林さんに処方したことはない」と話した。
一方、林さんが19年8月以降に「死にたい」などと繰り返し訴えていたと証言。9月には「安楽死したい」と求められたが、拒否したことも明らかにした。林さんから山本被告宛ての紹介状を書いてほしいと要望されたとも述べた。
起訴状によると、山本被告は医師の大久保愉一(よしかず)被告(45)と共謀。林さんの依頼を受け、京都市内のマンションで胃にチューブで栄養を送る「胃ろう」から薬物を注入して殺害したとされる。「共謀していない」と起訴内容を否認している。【久保聡】