《東京女子医の闇》女帝・岩本絹子理事長をめぐって“新たに疑惑のカネ1600万円”が浮上!「大学と不動産会社ぐるみの偽装仲介か? 警視庁捜査の行方は…」

《独占スクープ》「背任罪で捜査開始へ」東京女子医大理事長に対する告発状を警視庁が受理! から続く
警視庁捜査2課が、東京女子医科大学の岩本絹子理事長をめぐる「疑惑のカネ」を捜査しているなか、新たに「第4の疑惑」が浮上した。
附属病院の移転で荒川区に土地を売却した際、不動産会社に約1600万円の仲介手数料が支払われたが、その不動産会社は本来の仲介業務をしておらず、女子医大と不動産会社ぐるみの“偽装仲介”の可能性があるのだ。
経営の迷走によって深刻な医療崩壊に直面している女子医大の裏で、密かに行われていた土地取引の「闇」を追った──。
◆◆◆
「第4の疑惑」の舞台は東医療センター「博友寮」の跡地
隅田川のほとりにある荒川区立宮前公園には、巨大な送電塔がそびえ立ち、高原のような庭園にワイルドフラワーが咲き乱れている。「第4の疑惑」の舞台は、この不思議な光景が広がる場所に5年前まで建っていた、女子医大・東医療センターの「博友寮(はくゆうりょう)」である。
東京の医療過疎地と言われる荒川区で唯一の基幹病院が、女子医大の附属病院である東医療センターだった。「博友寮」は、その東医療センターで働く職員のため、1971年に建てられた。鉄筋コンクリート4階建で40室あり、以前は全国から集まった研修医などで満室だったが、老朽化が進むにつれて、大半が空室の状態になっていた。
2018年3月、東医療センターの足立区移転に伴い、「博友寮」は解体後更地にすることが、女子医大の理事会で承認された。申請したのは、副理事長(当時)として経営の実権を握っていた、岩本絹子氏である。
仲介業者の記載がない「手数料約1600万円」の稟議書
同年11月、岩本氏は「博友寮跡地」の1376㎡を、荒川区に約5億円で売却する計画について、再び理事会に申請して承認された。この時の稟議書(申請日2018年11月13日)を入手したところ、仲介手数料(*稟議書では売買手数料)として、約1600万円が計上されていたが、仲介業者の名はどこにもない。
今回、女子医大に質問状を送付したところ、仲介業者との契約締結は「2018年4月ころ」と回答した。そうであれば、この稟議書に仲介業者を記載することは可能だったことになる。だが、仲介業者の名前が明かされたのは、翌2019年4月に岩本氏が理事長に就任した後、仲介手数料の約1600万円の支払いを申請した稟議書だった。
この時の事情を知る、女子医大関係者はこう証言する。
「当時、岩本先生は別の不動産売買の際に、これまで女子医大と取引実績がなかった江戸川区の不動産会社に、仲介業務をさせるよう部下に指示しました。岩本先生の自宅近くの誰も知らない小さな会社です。博友寮跡地の売却も同じ不動産会社でした。ところが、本来は自治体との土地取引の場合には仲介業者は必要ありません。にもかかわらず仲介を依頼し、しかも高額な手数料を払うのはおかしいと思いました」
“買主を探す”必要性はなかった
土地取引の「仲介業務」について、明海大学不動産学部の中村喜久夫教授は次のように解説する。
「売主から依頼を受けた仲介業者の仕事は、買主を探して売買契約を締結することです。その際、仲介業者には、(1)買主に重要事項を説明する、(2)契約成立後に37条書面(いわゆる契約書)を交付する、という義務が宅地建物取引業法で定められています。ただし、買主が国や自治体で、公園や道路など公共用地の場合は、宅建業法の適用除外となり、(1)と(2)を行わないこともあります」
実は荒川区では、一帯を広大な宮前公園とする整備が2016年から始まっていた。荒川区の横山幸次議員によると、「博友寮跡地は公園の中心部に位置していたので、荒川区が買主になることは既定路線だった」と語る。
つまり、「博友寮跡地」の“買主を探す”必要性はなく、契約の際の説明義務もない。そのほかに考えられる仲介業務は、売却価格の交渉くらいだろう。実際、稟議書には交渉によって、当初の見込額よりも約1.3億円も高く売却した、と記してあった。
〈「売却額について荒川区と協議に協議を重ねて参りました。本学にとって売却益が出るよう交渉し続け、(中略)交渉結果を導きました。これは、博友寮の近隣路線価約27万円/㎡(→約3.7億円)に対し、約36.8万円/㎡(→約5億円)での取引にあたります」 (*2018年11月13日稟議書より抜粋 太字は筆者)〉
もし、本当に約1.3億円も売却価格をアップさせたとしたら、相当な凄腕だろう。一体、荒川区を相手に、誰がどのような交渉を行ったのか、女子医大に質問すると、こんな回答が返ってきた。
〈「土地価格は地形、道路付け、位置、面積等の諸条件により単価が変わってくるのも周知の事実であり、博友寮等跡地もこれらの諸条件がよいからこそ、路線価よりも高い金額で売却するに至ったということであり、誰が交渉したかどうかは関係がありません」(女子医大の回答・抜粋 太字は筆者)〉
「路線価」で算出された売却見込額が安いのは当然
ここでポイントになるのは「路線価」である。岩本氏が申請した稟議書では、いずれも「博友寮跡地」の売却見込み額を「路線価」で算出していた。これに関して、前出の中村教授(明海大・不動産学部)は、こう指摘する。
「そもそも路線価は相続税などの基準になるもので、実勢の地価よりも2割以上安いのが普通です。売却見込額を路線価で算出すると、極端に安い価格になってしまいます。これは、土地取引に多少でも関わる人なら常識です」
土地の実勢価格より、2割以上安い路線価で売却見込み額を算出しておけば、“普通の相場”で売れたとしても、高く売れたように錯覚する人もいるのではないか。
「博友寮跡地」の取引を担当した、荒川区土地開発公社の関係者(区職員が兼務)に、女子医大が交渉によって、見込み額より1.3億円も高く売れた、と主張していることについて聞くと、不快感をあらわにした。
「何故、こんなこと書いているんでしょうね。どこを調べていただいても構いませんけど、うち(荒川区)が女子医大に言われたからって、購入額を高くすることはできません。土地の購入価格は、外部の不動産鑑定士などを入れた、財産価格審議会によって決められますので」
大半の自治体では、第三者の専門家も交えた財産価格審議会が、実質的に土地の購入価格を決定している。女子医大の稟議書に記載されていたように、“協議に協議を重ね”交渉したとしても、購入価格に影響はない、と荒川区の担当者は断言した。
「同席はしていましたが、仲介はしていないと思います」
では、女子医大が契約した仲介業者がどのような役割を果たしたのか、荒川区の担当者(当時)に確認すると──。
「確か女子医大の担当職員が、不動産業者みたいな人を連れてきていたような気もしますが…。ただ、その者を介して契約したとかではありません。同席はしていましたが、仲介はしていないと思います。だって直接、荒川区土地開発公社と女子医大が契約を結んでいますから。契約書も荒川区土地開発公社が作成しました」
2019年2月7日に締結された「博友寮跡地」の土地売買契約書には女子医大と荒川区それぞれの理事長名が記されているが、仲介業者の名はどこにも見当たらない。
不動産売買に詳しい、東京山手法律事務所の野間啓弁護士は、自治体との土地取引で民間側に仲介業者が入るケースは稀にあるとした上で、次のように指摘する。
「今回のように、売主側だけに仲介業者が付くことを業界用語で『片手取引』と呼びますが、この場合に最も重要なのは、買主を見つけることです。今回、買主は荒川区でほぼ決まっていたわけですし、重要事項の説明も行わず、契約書も荒川区が作成したのなら、仲介業者を入れる意味がよく分かりません。契約書に仲介業者の記載がないのも、不自然で違和感を覚えます」
女子医大は、東医療センター「博友寮跡地」の売却で仲介業者がどのような業務を行ったのか、という質問に対して概ねこのように答えた。
〈 販売活動、博友寮の謄本・公図・隣地所有者の入手、契約までのスケジュール、荒川区との協議の中で他に1社売渡承諾書を希望した会社があることの証明、荒川区との協議の場への同席 (毎回)、売買契約書及び重要事項説明書の作成 (結果的にいずれも使用されなかった)、荒川区土地開発公社側が作成した売買契約書の確認、路線価格公示価格等の調査等(*回答から抜粋)〉
多くの業務が羅列されているが、仲介業務として最も重要な「買主を探して売買契約を締結する」という点がすっぽり抜けている。これでは業務の実態はなく、“偽装仲介”といわれても仕方がないのではないか。
社長は「個人情報には答えない」と言うが…
真相を確かめるべく、江戸川区の不動産会社(仲介業者)を2度訪ねて取材を申し入れたが、社長は不在だった。後日、社長本人から筆者に電話があり、「個人情報には答えない。取材は受けないのが会社の方針」と述べた。だが、言うまでもないが、女子医大の土地取引は、個人情報とはいえないだろう。
東京地検元検事の落合洋司弁護士は、今回の土地取引をめぐる「第4の疑惑」について、次のように見解を述べる。
「土地取引で、あたかも実態業務を伴っているように見える仲介契約に手数料を払った場合、実は違っていたら権限濫用であり、背任罪(*注)の疑いがあります。単に交渉の場に同席したとか、謄本の取得や連絡窓口だった程度で、1600万円以上の手数料は常識的にあり得ません。
背任罪の構成要件である『自己の利益を図る』という観点で考えると、警察は岩本氏に仲介手数料の一部がキックバックされたのか、まず注目するでしょう。ただし、背任罪には『第三者の利益を図る』という要件もあるので、仮にキックバックがなくても立件は可能と考えられます」
(*注:刑法247条=他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する)
警視庁捜査2課が、岩本絹子氏に対する告発状を受理して約3カ月、極秘に進められている捜査の行方に注目したい。
(岩澤 倫彦/Webオリジナル(特集班))