新型コロナ「第9波」入り口か 沖縄8波超え 夏休みへ警戒

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日に5類に引き下げられて以降、感染者数が緩やかに増え続けている。専門家は流行「第9波」が始まった可能性を指摘し、特に沖縄では、昨冬の第8波のピークを越える水準となっている。社会活動の活発化や新たな変異型の出現も背景にあるとみられ、夏休みに向けて人流増によるさらなる感染拡大への警戒が強まっている。
8波の入り口と同水準
厚生労働省は30日、全国約5千の定点医療機関から6月19~25日に報告された新型コロナの感染者は計3万255人で、1定点医療機関当たりの平均は6・13人だったと発表。前週比は1・09倍となった。都道府県別では、新潟県と富山県以外のすべてで上昇した。
5月19日の初回発表(同月8~14日分)は1定点当たり2・63人だったため、1カ月あまりで約2・3倍に達したことになる。
厚労省が参考値として示した昨年冬の第8波の定点把握数では、始期に当たる令和4年10月3~9日分で6・37人だった。今回の公表人数と同水準で、「波」の入り口にさしかかったとの見方が強まっている。
特に感染拡大が顕著なのが沖縄だ。6月19~25日の1医療機関当たりの平均は前週比1・37倍となる39・48人と突出している。第8波の全国のピーク(29・80人)を上回った。
波ごとに拡大も
拡大要因の1つに挙げられるのは、流行株の種類だ。厚労省にコロナ対応を助言する専門家組織によると、第8波で主流だったオミクロン株の「BA・5」から、複数のオミクロン株が組み合わさった「XBB」系統に置き換わっている。これまでのワクチン接種などで得た免疫を逃れる能力が高いとされ、時間経過による減衰時期とも重なった。6月16日の会合では変異株の出現を踏まえ、「夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見方が示された。
新型コロナが、再び猛威を振るうのか。専門家組織有志は4月、英国を先行事例として示した。同国ではオミクロン株が広がった昨年1月以降、流行の波ごとに感染規模が縮小し、重症者数や死者数のピークも徐々に低下したという。自然感染による抗体保有率が人口の86%を超えており、これが影響した可能性がある。
日本でも将来的に英国同様、流行規模が縮小していくと予想。一方、国内の抗体保有率が約42%とまだ低く、こうした減衰サイクルに入る時期はまだ先になるとの分析が示された。
ノーガードはNG
感染者数という「母数」の増加は、重症者や死者数の増加につながる。
過去の感染拡大期を見ると、オミクロン株が主流となった令和3年末から4年春ごろの第6波から感染者数が急増。比例して死者数も増え、この時期だけで1万人を超えた。昨冬の第8波では、第7波の約2倍の2万8千人超が命を落とした。
新型コロナの重症化率や致死率は、季節性インフルエンザと同水準になりつつあるとのデータがあるが、高齢者年代は依然、数倍程度高いと指摘される。
順天堂大大学院の堀賢教授(感染制御科学)は、「5類移行後の開放的な機運に乗って、国民全体がコロナに対し『ノーガード』のような状態になった」と指摘。夏休みの時期に入り人流増が見込まれる中、「ガードを常に高く上げておく必要はないが、コロナが消えたわけでは決してない。この1~2年は状況に応じ、上げたり下げたりするという意識が必要だ」としている。(中村翔樹)

東京医科大・濱田篤郎特任教授の話
「30日発表の定点当たりの新規感染者数では、沖縄が40人に迫る別格の高水準だった。同じ5類の季節性インフルエンザでは、定点当たりの患者数が1人を超えると「流行入り」、10人超で「注意報」、30人超で「警報」が発令される。
新型コロナウイルスに同様の仕組みはないものの、単純に当てはめれば警報を超える数値で、政府が何らかのシグナルを発してもよいレベルだろう。改めて、仕組みの早期の導入も求めたい。
今後の見通しでは、夏場となり、人流の増加などさらなる拡大につながる要素もあるが、元来、空気が湿潤で飛沫(ひまつ)感染が起きづらく、感染拡大は生じにくい時期でもある。
流行第7波など、夏季に拡大した例はあるが、このときは感染力の強い変異株などが出現したことが大きい。現状、そうした状況は確認されていない。
今回のいわゆる第9波は、それほど高いピークには達しないとみている。とはいえ、梅雨が明け、夏休みが終わる8月中旬ごろまでは増加傾向が続く可能性はある。換気など含め基本的な感染対策を徹底するということに尽きるだろう」