―[言論ストロングスタイル]― ◆解散風の次は改造風が吹き始めた 私は一貫して「こんな時期に解散し、総選挙に突入したとしたら、おもしろい」と言い続けた。案の定と言って良いのか、岸田文雄首相は見事なまでの腰砕けとなった。 誰が反対しても、総理大臣が「反対の閣僚を罷免して全閣僚を兼任の上で衆議院を解散する」と宣言すれば、誰も止めることはできない。日本の総理大臣は衆議院選挙に負けなければ、本人が「辞める」と言わない限り、辞めさせることはできないのだ。 しかし、岸田首相は散々「解散風」を吹かして与野党の衆議院議員を選挙準備に走らせた挙句、「やっぱ、やめた」と、とりやめた。今や「解散権を弄んでいる」との批判が高まりつつある一方、秋の内閣改造に向けて今度は「改造風」が吹き始めた。 ◆解散権が首相の伝家の宝刀と言われる所以 今後、岸田首相が自ら「辞める」と言いたくなるような圧力が加わるだろうか。 そもそも、もし岸田首相がこんな時期に衆議院を解散したら、何が「おもしろい」のか。政治のセオリーに外れているからである。 政治はスケジュールで動く。岸田首相が政権の座を維持する次の関門は、来年9月に予定されている自民党総裁選だ。その時に多数派でいる為には、その前に解散総選挙を打って、味方を一人でも多く増やしたい。「政権は、解散をすれば強くなり、内閣改造を繰り返せば弱くなる」と言われる。これは、例外はあるが、一般論としては正しい。なぜなら、解散とは衆議院議員全員の身分を失わせることであり、代議士は本能的に恐れる。その上で「自分を当選させてくれた総理」には感謝するし、勝たせてくれる総理の下で選挙を戦いたい。解散権が首相の伝家の宝刀と言われる所以である。 ◆岸田首相にとって適切な解散の時期 では、岸田首相にとって、解散の適切な時期はいつか。来年の6月、つまり来年の今ごろである。通常国会が終わるタイミングで解散、総選挙で勝利をして、総裁選に臨みたい。 逆算すると、今年の今の時期は何をしなければならないか。「改造風」である。今年の8月で今の岸田内閣の大臣任期が1年となるので、9月が改造の時期だ。ほっといても、大臣になりたい政治家はソワソワする。今ごろになって「改造風」を吹かせるなら、何の為の解散風だったのか。来年なら衆議院議員は前の解散から3年目だが、今年だと任期半分の2年も経っていない。これでは、何がしたかったかわからない。仮にこの6月に解散しても、来年の自民党総裁選まで1年以上、どうやって政権を維持するつもりだったのか。